これは、私が大学を卒業して初めての仕事に就いたばかりの頃に体験した、忘れられない恐怖の話です。都内の大手企業に就職し、ビルの高層階にあるオフィスで働いていた私は、毎日エレベーターで通勤していました。しかし、あの奇妙な出来事が起こるまでは、エレベーターがこんなにも恐ろしい場所になるとは思いもしませんでした。
ある晩、残業が続き、気づけば終電間際の時間になっていました。急いでデスクを片付け、エレベーターに向かいました。ビルの中は既に静まり返り、誰もいない廊下が不気味に感じられました。エレベーターに乗り込み、1階のボタンを押してドアが閉まるのを待ちました。
エレベーターは静かに下降し始めましたが、途中で突然止まりました。驚いてボタンを何度か押しましたが、反応がありません。スマートフォンを取り出し、救助を呼ぼうとしましたが、なぜか電波が届きませんでした。エレベーターの緊急ボタンを押してみましたが、応答はありません。
しばらくして、エレベーターが再び動き出しました。しかし、停止したのは見覚えのないフロアでした。ドアが開くと、そこは廃墟のように荒れ果てたフロアでした。壁にはひびが入り、床には埃が積もり、明かりもほとんどありませんでした。明らかに自分がいたビルではありませんでした。恐る恐るエレベーターから一歩踏み出しました。
その時、突然ドアが閉まり、エレベーターが動き出しました。慌ててドアに駆け寄りましたが、間に合いませんでした。私は見知らぬ廃墟のようなフロアに取り残されてしまいました。心臓が激しく鼓動し、冷や汗が流れました。
フロアを見渡すと、遠くから微かな足音が聞こえてきました。誰かがいるのかもしれないと考え、声をかけようとしましたが、言葉が出ませんでした。足音は徐々に近づいてきて、やがて一人の女性が現れました。彼女は古びた服を着ており、顔は見えませんでした。
「助けてください」と私は声を絞り出しました。しかし、彼女は反応せず、ただこちらをじっと見つめていました。彼女の目が見えると、それはまるで魂のないような、冷たい視線でした。私は背筋が凍りつき、後ずさりしました。
突然、彼女が口を開き、低い声で言いました。「ここから出られない…ここはもう…存在しない…」その言葉を聞いた瞬間、私は全身が震え、恐怖で動けなくなりました。彼女が一歩一歩こちらに近づいてくるのを見て、私は必死に逃げ出しました。
廊下を走りながら、何とか他のエレベーターを見つけました。ボタンを押し続け、ドアが開くのを祈りました。ようやくエレベーターのドアが開き、私は飛び乗りました。1階のボタンを押すと、エレベーターは静かに下降し始めました。心臓の鼓動が収まるのを感じながら、背後を振り返ると、あの女性はどこにもいませんでした。
エレベーターが1階に到着し、ドアが開くと、そこには現実の世界が広がっていました。急いでビルを飛び出し、外の空気を深く吸い込みました。冷たい夜風が顔に当たり、現実に戻ったことを実感しました。
翌日、同僚に昨夜の出来事を話しましたが、誰も信じてくれませんでした。ビルの管理者に確認しても、そんなフロアは存在しないと言われました。私が体験したことは何だったのか、未だに理解できません。
その後、私はエレベーターに乗るたびに、あの出来事を思い出します。深夜のエレベーターで感じた恐怖と、見知らぬフロアの記憶は、今でも私の心に深く刻まれています。もしあなたが深夜にエレベーターに乗ることがあれば、くれぐれも注意してください。そこには、私のような恐ろしい体験が待っているかもしれません。