怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

「見えない住人」(怖い話、奇妙な話)

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それは、私が大学を卒業してすぐに引っ越した古いアパートでの出来事でした。新しい職場に近いという理由だけで選んだそのアパートは、築50年以上の古い建物で、家賃も安く、正直あまり期待していませんでした。しかし、安さに惹かれてそこに住むことに決めました。

最初の数週間は特に問題もなく、仕事と新しい生活に忙しくしていました。しかし、ある晩、仕事から帰宅すると、部屋の中に何か違和感を感じました。ドアの鍵はちゃんとかかっていたし、窓も閉まっていました。でも、なぜか誰かが部屋にいたような気配がしたのです。

その時は気のせいだと思い込み、深く考えずに過ごしました。しかし、それから数日後、再び同じような違和感を覚えました。まるで誰かが私の部屋にいるような気配が、部屋の中に漂っていました。私は怖くなり、念のため部屋の隅々をチェックしましたが、何も見つかりませんでした。

それからというもの、部屋の中で奇妙な現象が続きました。夜中に突然目が覚めると、誰かが私の耳元で囁くような音が聞こえたり、寝ている間に布団が動かされたりすることがありました。ある晩、ベッドの下から何かが這い出てくる音を聞いた時には、もう我慢の限界でした。

私は友人に相談し、彼が心霊現象に詳しいという知人を紹介してくれました。その知人は、「あなたの部屋には見えない住人がいるかもしれません」と言いました。そして、彼は私にお祓いの方法を教えてくれました。

お祓いの夜、私は部屋中に塩を撒き、浄化の儀式を行いました。その時、一瞬の冷気が部屋を走り抜け、まるで誰かが私を見つめているような感覚がありました。私は恐怖に震えながらも、必死に儀式を続けました。すると、次第に部屋の空気が軽くなり、気配も消えていきました。

それ以来、奇妙な現象は収まりました。私はほっとして、再び平穏な日々を過ごせるようになりました。しかし、数週間後、再び不気味な出来事が起こりました。深夜、突然目が覚めると、ベッドの隣に立つ影のようなものが見えたのです。目を凝らして見ると、それはぼんやりとした人影で、こちらをじっと見つめていました。

私は恐怖に凍りつき、声も出せませんでした。影は徐々に近づいてきて、耳元で囁きました。「ここから出て行け…」その声は冷たく、背筋が凍るようなものでした。私は恐怖のあまり動けず、そのまま朝を迎えました。

翌朝、私は決意しました。この部屋からすぐにでも引っ越す必要があると。急いで荷物をまとめ、不動産屋に連絡して新しい部屋を探し始めました。数日後、新しい部屋が見つかり、私はすぐに引っ越しました。

引っ越し後、再び平穏な生活が戻ってきました。あの古いアパートでの出来事は、まるで悪夢のように感じられました。しかし、あの影の囁きは今でも耳に残っています。「ここから出て行け…」その言葉が、今でも私の心に深く刻まれています。

後に、あのアパートについて調べてみると、過去に何度か不審な事件が起こっていたことがわかりました。特に私が住んでいた部屋では、かつて住んでいた住人が謎の失踪を遂げていたのです。あの影は、その住人の怨霊だったのかもしれません。

今でも、あのアパートの前を通るたびに、背筋が凍る思いがします。そして、二度とあのような場所に住むことがないよう、慎重に部屋を選ぶようになりました。あの奇妙な体験は、私にとって一生忘れられない恐怖の記憶として残っています。

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