その小さな村には、古くから伝わる恐ろしい話がありました。村の外れには、まるで廃屋のような古びた家がひっそりと佇んでいました。家の中には一つの人形があり、その人形には恐ろしい伝説がつきまとっていました。
その人形は、白いドレスを着た少女の姿で、笑顔を浮かべた陶器の顔が特徴でした。目は黒いビーズでできており、まるで人をじっと見つめているようでした。村の人々はその人形を恐れ、決して近づこうとはしませんでした。
数年前、若い夫婦が村に引っ越してきました。彼らは都会の喧騒から逃れるためにこの静かな村を選んだのです。新しい家に引っ越しが終わると、夫婦は村の周囲を散策し、古びた家を見つけました。好奇心からその家に足を踏み入れてみることにしました。
家の中は埃だらけで、長い間放置されていた様子が伺えました。夫婦は屋内を探検していると、古いクローゼットの中に一体の人形を見つけました。人形は見た目こそ古びていたが、異常なほどに美しく、その笑顔がどこか引き寄せられるような感じがしました。
「この人形、ちょっと面白いね。」夫は笑いながら人形を手に取りましたが、妻はどこか不安そうな表情を浮かべました。「なんだか怖い気がする。」
夫は人形を家に持ち帰ることを決め、その人形をリビングの棚に飾ることにしました。それからというもの、家族の生活は少しずつ変わり始めました。夜になると、家の中に不気味な囁き声が響くようになり、特にリビングの人形の近くではその声が強く感じられました。
ある晩、夫が寝室でテレビを見ていると、リビングから誰かが囁く声が聞こえてきました。声ははっきりと「おいで…おいで…」と呼んでいるように聞こえました。夫は気のせいだと思い、気に留めませんでしたが、妻はその声に不安を覚えました。
その後、妻が一人で家にいると、人形の目が自分に向けられているのを感じました。部屋が冷え込み、風が強く吹くような感覚がしばしばありました。夜になると、人形がわずかに動いているように見えることがありましたが、最初は気のせいだと思っていました。
ある晩、妻は寝室で目を覚ますと、部屋の中が異常に寒くなっていることに気づきました。ふと見ると、リビングの方からかすかな囁き声が聞こえてきました。「おいで…おいで…」その声がどんどん大きくなり、妻は恐怖で震えながらもリビングに向かいました。
リビングに着くと、人形の目が異常に光っており、そこに立っているかのように感じました。人形がわずかに動いているように見え、その口がほんのり動いて「一緒に…遊びましょう…」と囁きました。妻は恐怖で立ちすくみ、どうしても近づけませんでした。
その後、夫婦は人形を捨てようと決心しました。翌朝、夫が人形を家の外に置きましたが、人形は再び家の中に戻ってきました。夫婦が何度も捨てようとしましたが、毎回家の中に戻ってきました。どうにもできなくなった夫婦は、その人形を屋根裏部屋に隠すことにしました。
それ以降、夫婦はその家を手放すことに決め、別の場所に引っ越しました。家は新しい持ち主に渡り、誰もがその人形について知らずに住むことになりましたが、人形の囁きは今も変わらずその家に潜んでいると言われています。
そして今も、その人形の囁きはどこかで続いているのかもしれません。「おいで…おいで…」と、誰かを待ち続けているのです。
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