田中翔太は、東京の中堅企業で働く30代の会社員だった。仕事は忙しく、毎日遅くまでオフィスに残っていた。そんなある日、彼は古びた中古パソコンを見つけた。会社の倉庫整理の際、廃棄予定の機器の中に紛れ込んでいたのだ。パソコンには「FORGOTTEN」とだけ書かれたシールが貼られていた。
「何だこれ…?」
興味をそそられた翔太は、そのパソコンを自宅に持ち帰ることにした。古びてはいるが、レトロなデザインが妙に気に入ったのだ。家に着くと、彼は早速パソコンをセットアップし、電源を入れた。
パソコンは予想以上にスムーズに起動し、古いOSが立ち上がった。デスクトップには見慣れないアイコンがいくつか並んでいたが、中でもひときわ目を引くアイコンがあった。「MYSTERY」と書かれたそのアイコンをクリックすると、黒い画面に白い文字が浮かび上がった。
「ようこそ、田中翔太さん。」
驚いたことに、パソコンは彼の名前を知っていた。彼は警戒しながらも興味を抑えられず、画面に表示されたメッセージを読み進めた。
「あなたの未来を知りたいですか?このパソコンは、未来の出来事を予見することができます。ただし、その情報はあなたにとって良い結果をもたらすとは限りません。」
翔太は不安と好奇心が入り混じった気持ちで、画面の指示に従って「YES」をクリックした。すると、パソコンの画面が一瞬暗くなり、次に現れたのは彼の会社のオフィスだった。
画面には、翔太が働いているオフィスの一部が映し出されていた。彼がいつも座っているデスクの周りに、同僚たちが集まって何かを話している様子が見て取れた。彼は画面を凝視し、会話の内容を読み取ろうとした。
「田中さん、最近調子悪いみたいだね。プロジェクトの進捗も遅れてるし、上司からも不満の声が上がってるらしいよ。」
その言葉に、翔太の心臓がドキリとした。彼は自分の仕事ぶりが問題視されていることを知り、愕然とした。画面はさらに進み、彼が上司に呼び出される場面が映し出された。
「田中君、君の最近のパフォーマンスには失望している。改善が見られなければ、厳しい決断をせざるを得ない。」
翔太は息を呑んだ。彼はこのままでは職を失うかもしれないという現実に直面し、冷や汗が流れた。パソコンの画面は再び暗くなり、元のデスクトップに戻った。
「これは一体…?」
彼は混乱し、パソコンを閉じた。だが、気になることが一つあった。パソコンが見せた未来の出来事が、果たして現実に起こるのだろうか?それとも、ただの偶然の産物なのか?
次の日、翔太は会社に行くと、昨日パソコンが見せた光景が現実となっていることに気付いた。彼のデスクの周りに同僚たちが集まり、まさに画面で見た通りの会話をしていた。彼は驚愕し、何とかして状況を改善しなければならないと決意した。
その夜、再びパソコンを起動し、「MYSTERY」アイコンをクリックした。今度は別の未来の出来事が映し出された。彼がプロジェクトを成功させ、上司から表彰されている光景だった。彼はそのビジョンに希望を見出し、必死に努力することを決意した。
翔太はそれから数週間、仕事に没頭し、見事にプロジェクトを成功させた。上司からも評価され、同僚たちからも称賛の声が上がった。彼は未来を予見するパソコンの力に感謝した。
だが、その後も不思議な出来事は続いた。パソコンは、彼の日常に影響を与える出来事を次々と予見するようになった。友人との喧嘩、家族の問題、そして予想もしなかった災難など、パソコンが見せる未来は常に正確であり、彼の行動に大きな影響を与えた。
ある日、翔太はふと考えた。このパソコンが見せる未来に頼りすぎているのではないか?自分の意思で決断し、行動することができなくなっているのではないか?彼は不安に駆られ、パソコンを封印することを決意した。
彼はパソコンを倉庫に戻し、再び使わないようにした。未来を知ることは確かに魅力的だったが、それによって自分の人生が支配されることに恐怖を感じたのだ。
数ヶ月後、翔太は自分の力で仕事を成功させ、プライベートも充実させることができた。彼はパソコンに頼らず、自分の力で未来を切り開くことができることを実感した。
だが、ふとした時に思い出すのは、あの不思議なパソコンとその予見の力だった。彼は一度だけ、再びパソコンを起動しようかと考えたが、その考えをすぐに振り払った。
「自分の未来は、自分で決めるものだ。」
彼はそう自分に言い聞かせ、再び日常の生活に戻った。未来を知ることの魅力に抗い、自分の力で運命を切り開くことが、彼にとって最も大切なことだと悟ったのだった。
翔太の人生は、その後も様々な困難や喜びに満ちていたが、彼は常に自分の意思で行動することを心がけた。あの不思議なパソコンとの出会いは、彼にとって重要な教訓となり、人生の指針となったのであった。
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