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終末の夜に鳴り響く足音 (怖い話 奇妙な話)

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時計の針が深夜0時を指す頃、田中修一は古びた木造の家の中で一人静かに息を潜めていた。彼が住んでいるこの家は、山奥の人里離れた場所にあり、電気も水道も通っていない。田中はこの家を祖父母から受け継いだが、ここに来るのは実に10年ぶりだった。

幼い頃、彼はこの家で数々の恐ろしい体験をしたことを忘れていなかった。深夜に聞こえる謎の足音、誰もいないはずの部屋で響く声、そして姿の見えない何かの存在感。そのすべてが彼の記憶に深く刻まれていた。

彼はその日、仕事で疲れ果てていたが、どうしてもこの家に戻らなければならない理由があった。両親の遺品を整理しに来たのだ。しかし、家に入るなり感じた異様な寒気と重苦しい雰囲気が、再び彼を恐怖の淵に引きずり込んだ。

その夜、田中は眠りに就こうとしていたが、突然、床下から微かな足音が聞こえてきた。最初はネズミか何かだと思っていたが、その音は徐々に大きくなり、やがて階段を登ってくるかのように聞こえ始めた。

「誰かいるのか…?」

田中は震える声で問いかけたが、返事はない。ただ足音だけが、次第に彼の寝室へと近づいてくる。そして、扉の前でピタリと止まった。彼は息を飲み、扉の向こうを見つめた。だが、何も見えない。静寂が戻ったかのように思われたその瞬間、扉がゆっくりと開いた。

そこには、かつてこの家に住んでいた住人たちの姿があった。彼らは皆、無表情で立ち尽くし、田中を見つめていた。田中は叫び声を上げそうになったが、声が出なかった。彼の体は凍りつき、動けなかった。すると、住人たちの中から一人の女性が一歩前に出て、田中に向かって囁いた。

「私たちはここで待っている。あなたも、もうすぐここに来ることになるわ。」

田中はその言葉に愕然とした。彼の心臓は激しく鼓動し、冷や汗が額を流れた。その瞬間、住人たちは一斉に消え去り、部屋には再び静寂が戻った。

彼は信じられない思いでその場に立ち尽くしていたが、次第に冷静さを取り戻し、再びベッドに横たわった。しかし、眠ることはできなかった。頭の中には、先ほどの出来事が鮮明に残っていた。

翌朝、彼は早々に家を出ることに決めた。しかし、家を出る直前、彼は再び足音を聞いた。それは、前夜と同じように床下から聞こえてきた。そして、その音は次第に大きくなり、再び彼の寝室へと向かってくる。

恐怖に駆られた田中は、何とかして家から逃げ出そうとしたが、足がすくんで動けなかった。足音はますます近づいてきた。そして、再び扉の前で止まった。田中は恐る恐る扉を見つめた。扉はゆっくりと開き、そこには昨夜と同じ住人たちが立っていた。

「お前たちは一体何なんだ!?」

田中は叫んだが、住人たちは無言のままだった。そして、再び一人の女性が一歩前に出て、田中に向かって囁いた。

「私たちはこの家に縛られている。あなたも、この家に縛られる運命にあるのよ。」

田中はその言葉に戦慄を覚えた。彼は何とかしてこの家から逃げ出さなければならないと思ったが、体は動かなかった。住人たちは一歩一歩、田中に近づいてきた。彼は必死に抵抗しようとしたが、力が入らない。次第に視界がぼやけ、意識が遠のいていった。

気が付くと、田中は古びた木造の家の中にいた。彼は周囲を見渡し、かつてこの家に住んでいた住人たちと同じ無表情で立ち尽くしていた。そして、新たにこの家に足を踏み入れる者を待ち続けるのだった。

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