若い会社員の佐藤美咲は、毎日同じように仕事と家の往復を繰り返す日々を送っていた。彼女の職場は忙しく、日々の業務に追われる中で、特にこれといった楽しみも見つけられずにいた。そんなある日の帰り道、ふと立ち寄ったスーパーの片隅で、小さなワゴンセールを見つけた。
「今日は何か面白いものでもないかな…」
彼女はふとワゴンセールに目を向けると、そこに「バターピーナッツ」と書かれたパッケージが目に入った。シンプルなデザインの袋には、少し古めかしい文字で「不思議なバターピーナッツ」と書かれていた。値段も手頃だったので、好奇心に駆られた美咲はそれを手に取ってみた。
「まあ、お試しに買ってみようかな」
家に帰り、夕食を済ませた美咲は、早速そのバターピーナッツを試してみることにした。袋を開けると、香ばしいバターの香りが広がり、一つつまんで口に運ぶと、その美味しさに驚いた。
「美味しい!」
一気に全部食べてしまうのはもったいないと思い、少しだけ食べて残りは後で楽しむことにした。
翌日、美咲はいつもと変わらない日常を送っていたが、昼休みに同僚の山田さんが突然彼女に話しかけてきた。
「佐藤さん、今日のランチは一緒にどうですか?」
普段あまり話さない山田さんからの誘いに驚きながらも、美咲はランチに出かけることにした。食事の間、山田さんは普段とは違う一面を見せ、楽しいひと時を過ごすことができた。
「なんだか今日はちょっと不思議な一日だったな…」
家に帰った美咲は、またバターピーナッツを少し食べた。やはり美味しいと感じながら、パッケージをじっくりと眺めると、注意事項のところに「このバターピーナッツを食べると日常で少しだけ不思議なことが起こることがあります」と書かれているのに気づいた。
「冗談みたいだけど、昨日のこともこれのおかげかな?」
そう思いつつ、次の日も普通に過ごしていたが、やはり少し不思議な出来事が起こった。その日は電車の中で、普段は見かけないはずの昔の友人と偶然再会したのだ。話し込むうちに、昔の思い出が蘇り、懐かしい気持ちに浸った。
「やっぱり、このバターピーナッツのせいかも…」
美咲はそう思いつつ、その夜も残り少なくなったバターピーナッツを味わった。すると次の日もまた、不思議な出来事が起こった。今度は会社の帰りに寄ったカフェで、小さいころに食べてとても美味しかったが店がなくなり食べれなくなってしまったケーキにとても似ているケーキがあった。そのケーキを注文すると昔の味が蘇った。私が小さいころに食べてとても好きだったケーキの味だ。美咲はとても幸せな気分になった。
バターピーナッツが原因だと確信した美咲は、会社帰りに再びスーパーに立ち寄った。しかし、あのワゴンセールはどこにも見当たらなかった。不思議に思いながら、店員に尋ねてみた。
「あの、先日ここでバターピーナッツのワゴンセールを見かけたんですが…」
「申し訳ありませんが、当店ではそのようなセールは行っておりませんし、バターピーナッツも取り扱っておりません。」
美咲は驚いて食い下がった。
「でも、確かにここで買ったんです。もう一度確認してもらえませんか?」
店員は困惑しながらも丁寧に対応してくれたが、やはり結果は同じだった。売り場にも倉庫にもそのような商品はないという。
「そんなはずは…」
諦めきれない美咲は、何度も店内を探したが、結局あのバターピーナッツを見つけることはできなかった。家に帰り、残りのバターピーナッツを大切に味わいながら、美咲はその不思議な出来事を思い返した。
あのバターピーナッツがもたらした小さな不思議な出来事は、美咲の日常に少しだけ彩りを添えてくれた。もしかすると、あれはただの偶然だったのかもしれない。しかし、美咲にとっては、その一つ一つの出来事が特別な思い出となっていた。
「またあのバターピーナッツに出会える日が来るといいな…」
そう思いながら、美咲はその日も穏やかな気持ちで眠りについた。バターピーナッツの不思議な力は、彼女の心に小さな変化をもたらしていたのかもしれない。
翌日もまた、いつもの日常が待っていた。しかし、どこかでまたあのバターピーナッツに出会えるかもしれないという期待を胸に、美咲は新しい一日を迎えた。小さな不思議な出来事を楽しみにしながら、彼女の日々は少しずつ輝きを増していった。
そして美咲は、どこかで再びあのバターピーナッツに出会える日を心待ちにしているのだった。
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