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不思議な副業 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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田中健一は、東京都内のIT企業で働く30代のサラリーマンだった。仕事は忙しく、毎日残業が続いていたが、それでも何とか生活を送っていた。だが、最近は将来の不安が募り、副業を始めることを考えるようになった。そんなある日、彼はインターネットで「不思議な副業」の広告を見つけた。

「特別な能力不要!高収入確実!興味のある方はぜひお試しください。」

広告には怪しさも感じたが、健一は興味を引かれ、リンクをクリックした。そこには「エンジェルコンサルタント」という職業が紹介されていた。具体的な仕事内容は不明だったが、説明には「人々の願いを叶える手助けをする」とだけ書かれていた。

健一は半信半疑ながらも、フォームに必要な情報を入力し、応募した。数日後、彼のメールに返事が届いた。面接の案内だった。場所は都内のビルの一室で、指定された日時に訪れることになった。

面接当日、健一は指定されたビルに向かった。ビルは古びていて、エレベーターもガタガタと音を立てていた。指定されたフロアに到着すると、ドアには「エンジェルコンサルティング」と書かれた看板が掛かっていた。彼は不安を感じながらも、ドアをノックした。

中に入ると、白いスーツを着た中年の男性が出迎えた。男性は優しい笑顔を浮かべながら、「田中さん、ようこそ。お待ちしていました。」と言った。

男性は自らを佐藤と名乗り、健一を会議室に案内した。会議室には、簡素なテーブルと椅子が並んでおり、壁には奇妙なシンボルが描かれていた。佐藤は席に座るよう促し、説明を始めた。

「田中さん、我々の仕事は人々の願いを叶える手助けをすることです。具体的には、人々の心の声を聞き、その願いが実現するように導くのです。」

健一は怪しさを感じながらも、「具体的にはどうやって?」と質問した。

佐藤は微笑みながら、「それはこの特別な道具を使います。」と言って、小さな箱を取り出した。箱の中には、金色に輝くペンが入っていた。

「このペンは特別な力を持っており、書かれた願いを現実にすることができます。ただし、使い方には注意が必要です。」

佐藤はペンの使い方を説明し、健一に試してみるよう促した。半信半疑の健一は、ペンを手に取り、紙に「お金持ちになりたい」と書いた。すると、ペンが一瞬輝き、その文字が消えた。

「これで完了です。」佐藤は言った。「あなたの願いは、このペンの力で実現します。ですが、願いが叶うのは他人の願いを叶えることが前提です。まずは他人の願いを叶えることで、自分の願いも叶うのです。」

健一はその話に驚きつつも、興味をそそられた。佐藤はさらに続けた。

「あなたには、まずは他人の願いを集め、それをこのペンで書き記していただきます。その結果、彼らの願いが叶い、同時にあなた自身の願いも叶うのです。」

健一はその説明に納得までしてないが興味をそそられ、その場で契約書にサインした。これで彼は「エンジェルコンサルタント」としての仕事を始めることになった。

最初の仕事は、同僚や友人、家族から願いを集めることだった。健一は初めての仕事に緊張しながらも、慎重に願いを聞いて回った。同僚の一人は「昇進したい」と願い、友人は「恋人が欲しい」と願った。健一はそれらの願いをペンで書き記し、願いが叶うのを見守った。

不思議なことに、彼がペンで書いた願いは次々と現実になっていった。同僚は数週間後に昇進し、友人も素敵な恋人を見つけた。健一はその力に驚きと興奮を覚え、自分の仕事に自信を持ち始めた。

しかし、願いが叶う一方で、健一は次第に奇妙なことに気付き始めた。ペンを使うたびに、自分の体力が奪われるような感覚があり、次第に疲れが溜まっていった。彼は佐藤に相談したが、佐藤は「それは一時的なものです。すぐに慣れるでしょう。」と軽く受け流した。

健一はその言葉を信じ、仕事を続けたが、体調は悪化する一方だった。そしてある日、彼はついに倒れてしまった。目が覚めると、彼は病院のベッドに横たわっていた。

「何が起こったんだ…?」

彼は混乱しながらも、佐藤に連絡を取った。佐藤は病院に駆けつけ、「あなたの体力が限界に達したようです。ペンの力を使いすぎたのでしょう。」と言った。

「それならどうすれば…?」健一は問いかけた。

佐藤は深刻な表情で「もう一度考え直す必要があります。この仕事は確かに特別ですが、その分リスクも大きいのです。」と言った。

健一はその言葉に愕然とし、自分の決断を見つめ直した。彼はペンの力に魅了され、人々の願いを叶えることに夢中になっていたが、その代償が自分の健康だったとは思いもしなかった。

病院での療養中、健一は自分の人生を振り返り、再び健康を取り戻すための方法を模索した。そして、退院後、彼は佐藤に辞職を申し出た。

「この仕事はもう続けられません。自分の健康を取り戻すことが最優先です。」

佐藤は理解を示し、「分かりました。田中さんが決めたことなら、私たちも応援します。ただ、いつかまたこの力が必要になる時が来たら、いつでも戻ってきてください。」と言った。

健一はペンを佐藤に返し、エンジェルコンサルタントとしての仕事を終えた。その後、彼は健康を取り戻すために努力し、バランスの取れた生活を送り始めた。仕事も見直し、副業に頼らず、自分の力で将来を切り開くことを決意した。

健一の人生は再び平穏を取り戻し、彼はエンジェルコンサルタントとしての経験を教訓に、新たな道を歩み始めた。そして、いつかまた特別な力が必要になる日が来たら、自分自身の力で立ち向かう覚悟を持っていた。

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