怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

誰もいない街 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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主人公の美咲は、小さな山の中にある大学に通う女子大生でした。その大学には、自然の豊かさを満喫できる遊歩道がありました。学生たちの中でもこの道を歩く者は少なく、特に平日の午後はほとんど無人でした。しかし、美咲にとってこの遊歩道は心の癒しの場所であり、授業の合間や放課後にしばしば足を運んでいました。

ある日の午後、学校が終わった美咲は、いつものように遊歩道を歩くことにしました。心地よい風が吹く中、美咲は自然の中を進んでいきます。道のりの中ほどには、昔研究所として使われていたという2階建てのプレハブ小屋がありました。現在は立ち入り禁止と書かれており、誰も近づくことはありませんでした。しかしその日、美咲は何故かその建物に強く引き寄せられるような感覚を覚えました。

「今日はちょっと冒険してみようかな。」

そう思った美咲は、遊歩道を外れてプレハブ小屋に向かいました。ドアに手をかけると、鍵はかかっておらず、簡単に開きました。中に入ると、机や椅子などの家具はなく、がらんとしているものの、意外にも綺麗でした。1階を一通り見渡した後、美咲は階段を上り、2階へと向かいました。

2階も同様にがらんとしており、最後に奥の部屋に足を踏み入れました。その部屋のさらに奥には、ひときわ異様な存在感を放つドアがありました。ドアの縁は古びた金属製で、微かに光を放っており、中央には見たこともない模様が刻まれていました。ドアノブは冷たい感触があり、手に触れると少し震えるような感覚が走りました。まるでドアそのものが何かを語りかけているかのような、不思議な雰囲気を醸し出していました。

「なんだろう、これ……?」

美咲は少し訝しがりながらも、そのドアに強い好奇心を感じました。恐る恐るドアノブを回すと、意外にも軽く開きました。ドアの向こうには暗闇が広がっており、一歩踏み出すと突然、激しいめまいに襲われました。足元がぐらつき、そのまま意識を失ってしまいました。

目を覚ますと、彼女は再びプレハブ小屋の中にいました。しかし、外に出るとそこは見知らぬ街でした。人っ子一人いない、静まり返った街。風もなく、生き物の気配も感じられない異様な場所でした。

美咲は恐る恐る街を歩き回りました。人が住んでいそうな家や、店員がいそうなコンビニ、スーパー、レストランが立ち並んでいましたが、どこにも人の姿はありません。試しにコンビニに入ってみると、商品は棚に並んでいるものの、どれも見たことのないものでした。美咲は好奇心からお菓子を手に取りました。いけないとわかりつつも食べてみたい気持ちを抑えきれば、思わず奇妙なお菓子を食べてみました。それはこれまでに食べたことのない美味しい味でした。

「ここは一体どこなんだろう?」

美咲は誰かに問いかけましたが、返答はありません。恐怖が彼女を襲いました。しかし、ふとプレハブ小屋の奇妙なドアをもう一度開けば元の世界に戻れるかもしれないと思い立ちました。急いでプレハブ小屋に戻り、奇妙なドアを開けると再びめまいがし、倒れました。目を覚ますと、元のプレハブ小屋に戻っていました。時計を見ると、遊歩道に入ってからわずか5分しか経っていませんでした。不思議な体験に戸惑いつつも、美咲は安心してその日は帰宅しました。

後日、美咲は再びプレハブ小屋を訪れ、奇妙なドアを開きました。再びめまいがし、倒れるとあの誰もいない街に戻っていました。今回は恐怖心よりも好奇心が勝り、美咲は街を楽しみ始めました。カフェでケーキを食べたり、スーパーでお弁当を食べてみたり。どれも見たことのないものでしたが、その美味しさは抜群でした。

ある日、美咲はお菓子を持ち帰りたいと思い、持って帰ることに挑戦しました。しかし、奇妙なドアを開けて元の世界に戻ると、お菓子は消えていました。どうやら、あの世界のものを持ち帰ることはできないようでした。

美咲は自分だけの秘密の街について親友のさやかに話すことにしました。二人で奇妙なドアを開くと、さやかもめまいがして倒れました。目を覚ますと二人は一緒に誰もいない街にいました。最初は恐れていたさやかも、美味しいお菓子や料理を楽しむうちに、その街を楽しむようになりました。

数回にわたり一緒に街を訪れたある日、二人はデパートの宝石コーナーに立ち寄りました。不思議で美しい宝石が並ぶ中、突然警備員のような格好をした男性が現れました。

「誰だ!?」

二人は驚きながら、警備員の男性をみました。」

「どこから入ってきた!?」

二人は少し恐怖を感じながらも、プレハブ小屋の奇妙なドアからこの街に来たことを説明しました。警備員は冷静になり、

「そんなところにドアが…」とつぶやいた後、「こちらの世界と君たちの世界とは不安定に繋がっていて、下手すると戻れなくなる。こちらはには2度と来ないように。」

そう言われた瞬間、再びめまいがし、倒れました。目を覚ますとプレハブ小屋に戻っていました。ただ、奇妙なドアは消えていました。それ以来、二人で何度もプレハブ小屋を訪れましたが、あのドアは二度と現れませんでした。

今でも美咲とさやかは、あの誰もいない街のことを話しますが、もう二度と行けないだろうと考えています。それでも、あの不思議な街での体験は二人にとって大切な思い出となりました。

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