裏路地の薄暗い道を、男は足早に歩いていた。目的地は、地図にも載っていないような、ひっそりと佇む一軒家。以前、酔っ払いの先輩から聞いたという。月曜日の夜しか開かないという、不思議な焼き鳥屋だ。
店構えは質素で、提灯一つが頼りの灯り。恐る恐る引き戸を開けると、店内はカウンターのみの小さな空間。大将は、いかにも胡散臭げな笑みを浮かべていた。
「いらっしゃい。お一人様?」
男は、とりあえず生ビールを注文した。カウンターには、既に常連客らしき男が一人、酒を飲んでいた。それは高校時代のクラスメイトだった。
「最近、あいつ元気にしてるかい?」
男が話したのは、学生時代の友人の名前だった。男もその名前を聞いたことがある。卒業後、疎遠になっていたが、懐かしくて話しかけてみた。
「そういえば、最近会ってないな。元気にしてるのかな」
二人は、昔話に花を咲かせ、あっという間に時間が過ぎた。
それから、男は毎週月曜日の夜、その焼き鳥屋に通うようになった。毎回、違う顔ぶれがカウンターに座っていた。そして、驚くことに、彼らは皆、男が昔よく知っていた人物ばかりだった。
学生時代の友人、サークル仲間、地元の先輩……。彼らは、まるでタイムスリップしてきたかのように、昔と変わらぬ笑顔で男を迎えてくれた。
しかし、ある日、男は恐ろしいことに気づいた。数日前に会ったばかりの男が、実は数年前に事故で亡くなっていたというのだ。
男は、背筋が凍りついた。もしかして、この焼き鳥屋で出会う人々は、みなすでにこの世を去っているのではないか?
次の週、男はいつも通り焼き鳥屋を訪れた。カウンターには、かつて一緒にバンドを組んでいた友人が座っていた。友人は、男に気づき声をかけた。
二人は懐かしい話に花を咲かせた。
「覚えてるかい? あのライブハウスで、俺たちが初めて演奏したときのこと」
友人は、懐かしそうに笑った。「もちろん覚えているよ。あの頃は若かったなぁ」
男は、友人が死んでいることを知っており、恐怖と同時に、不思議な安堵感を感じた。亡くなった友人たちと再び会えたことに。
家に帰ると、男は自分の存在について疑問を抱き始めた。もし、この焼き鳥屋で出会う人々がみな幽霊だとしたら、自分自身も…?
男は、鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。鏡の中の男は、いつもの自分だった。しかし、どこか虚ろな目をしているように見えた。
男は、この謎を解き明かすため、様々な調査を始めた。古い文献を調べたり、霊媒師に相談したりしたが、一向に答えは見つからなかった。
そして、ある夜、男は再び焼き鳥屋を訪れた。カウンターには、いつも通りの大将が立っていた。
「いらっしゃい。今日はどうされました?」
男は、大将に質問した。「この店は、一体何なんですか?」
大将は、男の目を見て、ゆっくりと話し始めた。「ここは、生きた者と死者が出会う場所だ。生きている者は、ここで過去の自分と再会できる。そして、死んだ者は、生前の記憶を辿りながら、安らぎを見つけることができる」
男は、大将の言葉に衝撃を受けた。そして、自分自身も、この世を去った者なのかもしれないという恐ろしい可能性に気づいた。
男は、その日以来、焼き鳥屋に行くのをやめた。しかし、心のどこかで、またあの店に行きたいという気持ちも消えなかった。
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