目次
序章
ある秋の夜、大学生の佐々木亮太は、古びた小さな書店で奇妙な漫画を見つけた。表紙にはタイトルも作者名も書かれておらず、ただ不気味な絵が描かれているだけだった。好奇心に駆られた亮太は、その漫画を手に取った瞬間、店主が鋭い目つきで彼を見つめた。
「その本はやめておいたほうがいい」と店主は低い声で警告した。
「どうしてですか?」と亮太が尋ねると、店主は言葉を濁して答えなかった。しかし、亮太はますます興味を持ち、その漫画を購入してしまった。
第一章
亮太はその夜、アパートに帰ると早速漫画を開いてみた。最初のページには、見覚えのある町並みが描かれていた。奇妙なことに、その町は亮太が住んでいる町と非常によく似ているように感じた。ページをめくるごとに、ストーリーは次第に不気味な方向へと展開していった。
ある日、主人公の青年が町を歩いていると、見知らぬ建物にたどり着く。その建物は廃墟のようで、中には古い家具や壊れたガラスが散乱していた。青年は好奇心から建物の中を探検し始めるが、その先で不気味な影に遭遇する。影は次第に形を持ち、人間の姿へと変わっていく。それは、かつてこの町で失踪したと言われる人々の霊だった。
第二章
漫画を読み進めるうちに、亮太は奇妙な現象に気づき始めた。描かれている町の風景や出来事が、現実の自分の周囲で起こることとシンクロしているように感じたのだ。例えば、漫画で主人公が見つけた廃墟が、亮太がよく行く公園の近くに実在していたり、漫画の中で起こる怪異が、亮太の身の回りでも発生するようになったりした。
ある晩、亮太は漫画の続きを読みながら、不安感に襲われた。漫画の中の主人公が、町の秘密を探るうちに次第に狂気に陥っていく様子が描かれていた。亮太はその場面に強い共感を覚え、自分もまた狂気に引きずり込まれるのではないかと恐れた。
第三章
その夜、亮太は悪夢にうなされた。夢の中で彼は、漫画の主人公と同じ廃墟に立っていた。周囲には暗闇が広がり、冷たい風が吹き荒れていた。突然、背後から低いうなり声が聞こえ、亮太は振り返った。そこには、漫画の中で見た不気味な影が立っていた。影は次第に近づき、その顔が亮太自身の顔であることに気づいた瞬間、亮太は悲鳴を上げて目を覚ました。
亮太は汗だくになってベッドから飛び起きた。夢の中の出来事があまりにも現実的で、彼の心は乱れていた。恐る恐る漫画を再び開いてみると、主人公が体験した出来事と夢の内容が一致していることに気づいた。亮太はこの漫画が何かしらの呪いを持っているのではないかと疑い始めた。
第四章
亮太は恐怖に耐えきれず、再び書店を訪れることにした。店主にこの漫画の正体を問いただそうと決意したのだ。しかし、書店に到着すると、店主は既に店を閉じてしまっていた。窓越しに中を覗くと、店内は薄暗く、誰もいないようだった。
翌日、亮太は再び書店を訪れた。店主は何事もなかったかのように店内にいた。亮太が漫画について尋ねると、店主は重い口を開いた。
「その漫画は、この町に古くから伝わる呪いの書だと言われている。読んだ者は、漫画の中の出来事と同じ運命を辿ると…」
亮太は青ざめた顔で店主の話を聞いた。呪いを解く方法を尋ねると、店主は一冊の古い本を差し出した。その本には、呪いを解くための儀式が詳細に書かれていた。
最終章
亮太はその夜、儀式を行うことを決意した。本に書かれた通りに準備を進め、深夜0時に儀式を開始した。蝋燭の明かりだけが部屋を照らし、静寂の中で亮太は呪文を唱え始めた。
すると、部屋の中が急に冷たくなり、亮太の周囲に不気味な気配が漂い始めた。影が再び現れ、亮太に近づいてきた。亮太は恐怖に震えながらも、必死に呪文を唱え続けた。影が亮太の目の前に立ち、冷たい手で彼の肩に触れた瞬間、亮太は強い光に包まれた。
気がつくと、亮太は自分の部屋で目を覚ました。全てが元通りになっていた。呪いは解けたのだ。亮太は安堵し、呪われた漫画を焼却することに決めた。
エピローグ
数日後、亮太は再び書店を訪れ、店主に感謝の言葉を伝えた。しかし、店主は静かに微笑むだけだった。亮太はその後、二度と不思議な現象に遭遇することはなかった。
それからしばらくして、亮太は友人と共に再び書店を訪れる機会があった。しかし、驚いたことに、その書店は完全に姿を消していた。まるで最初から存在しなかったかのように…。
亮太はその日以来、不思議な漫画のことを忘れようと努めたが、時折、夢の中で再び影に遭遇することがあった。そのたびに、彼はあの呪われた夜の恐怖を思い出すのだった。
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