目次
入院と不安の夜
その日は、重たい雲が空を覆い、冷たい風が吹き付ける冬の一日でした。私の心も同じように重く、冷たく感じていました。5歳になる息子の健太が風邪をこじらせて入院してしまったのです。病院のベッドで苦しそうに寝ている健太の姿を見た時、父親として何もしてやれない無力感が私を襲いました。
面会時間は限られており、夜遅くには病院に行くことはできませんでした。健太の元を離れ、家に帰る道中、心の中では「もしもこのまま治らなかったらどうしよう」という不安が渦巻いていました。家に着くと、私は何もする気が起きず、ただリビングのソファに沈み込みました。
夢の中での再会
その夜、私はいつものようにベッドに入ったものの、眠れずにいました。健太のことが心配で心配で、頭の中から離れません。どれだけ時間が経ったのかわかりませんが、ようやく疲れ果てて眠りについた時、驚くほど鮮明な夢を見始めました。
夢の中で、私は緑豊かな公園に立っていました。青い空の下で、子供たちが楽しそうに遊んでいる中、私もその一人として混じっていました。そこで見慣れた小さな背中を見つけました。それは間違いなく、私の息子、健太でした。
「お父さん!」健太が私の方に走ってきました。その笑顔は病院で見た苦しそうな表情とはまるで違い、健康そのものでした。私たちは公園でキャッチボールをしたり、滑り台で遊んだり、草の上に寝転んで空を見上げたりしました。時間を忘れるほど楽しんでいたのです。
現実の朝
次の日の朝、目が覚めると、夢の中での出来事があまりにもリアルで、現実との区別がつかないほどでした。私が見た夢があまりにも鮮明で幸せなものであったため、その余韻に浸りながら朝の支度をしました。
病院に電話をかけ、健太の様子を聞くと、驚くほど元気になっているとのことでした。昼過ぎに健太とテレビ電話で話す機会を得た時、私は夢の話をしました。
「健太、昨夜お父さん、すごく楽しい夢を見たんだよ。一緒に公園で遊んだんだ。」
すると、健太の目が輝きました。「お父さんもその夢見たの?僕も同じ夢を見たよ!キャッチボールして、滑り台で遊んで、それから…」
健太は私が話し出した夢の続きを、まるで見ていたかのように話し出したのです。二人で夢の中で同じ時間を過ごしていたことが、言葉では言い表せないほどの驚きと感動をもたらしました。
不思議なできごと
その後、健太は順調に回復し、数日後には無事に退院することができました。家に帰ってからも、私たちはあの夢の話をよくしました。それはまるで、本当に二人で過ごした時間のように感じられ、私たち親子の絆をさらに深めるものとなりました。
「お父さん、またあの夢見たいね」と健太は時々言います。私も同じ気持ちですが、あれ以来、あの夢を見ることはありませんでした。それでも、あの夜の夢は私たち親子にとって特別な思い出として心に刻まれています。
夢の中での不思議な再会がもたらしたのは、単なる偶然かもしれません。しかし、私は信じています。あの夜、私たちの心が強く繋がっていたからこそ、同じ夢を見たのだと。父と子の絆は、目に見えない力で繋がっているのかもしれません。
不思議な夢の話は、私たち親子の心に深く刻まれています。病気の恐怖や不安を乗り越えたあの夜の夢は、私たちにとって希望と癒しの象徴となり、これからも大切にしていきたいと思います。
新たな日常
退院してからの健太は、以前にも増して元気に過ごしています。あの夢の話をするたびに、私たちは自然と笑顔になります。そして、あの夜の夢が教えてくれたことは、どんなに離れていても、心が繋がっていれば大丈夫だということです。
夜、健太が眠りにつく前に、「お父さん、今日はどんな夢見るかな?」と聞いてきます。そのたびに私は、「きっと素敵な夢が見られるよ」と答えます。そして心の中で、またあの不思議な夢で会える日を楽しみにしています。
どんな未来が待っているかはわかりませんが、あの夢の夜が私たち親子に教えてくれた絆の強さを信じて、毎日を大切に過ごしていこうと思います。あの不思議な夢は、私たちにとって永遠に消えない大切な思い出となりました。
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