夏休み。太陽がギラギラと照りつける中、太郎は兄弟の次郎、三郎と、いつも遊んでいる裏山へと向かっていた。彼らの目的は、自分たちだけの秘密基地を作るためだ。
「ここ、どうかな?」
次郎が茂みの中を指さす。そこには、倒れた木が作る自然なトンネルのような空間があった。
「いいね!ここにしよう!」
三郎が賛成し、三人ともその提案に飛びついた。早速、持ってきた道具を使って、木を組み、葉っぱで屋根を覆い、自分たちだけの空間を作り上げていく。
「わーい!完成!」
完成した秘密基地は、彼らの遊び場となった。秘密基地の中で、お弁当を食べたり、ゲームをしたり、将来の夢を語り合ったり。秘密基地は、彼らにとってかけがえのない場所となった。
しかし、日が暮れるにつれ、秘密基地の中は薄暗くなり、少しだけ怖い雰囲気が漂い始めた。
「ちょっと、太郎。なんか変な気配がするんだけど…」
次郎が小声で言った。
「気のせだよ。ほら、ゲームしよう」
太郎はそう言って、ゲーム機を取り出したが、どこか落ち着かない気持ちだった。
「ねぇ、太郎。昔、この山で子供が迷子になったって話、聞いたことある?」
三郎が、昔聞いた話を始めた。
「え、本当?怖い…」
次郎が身を縮める。
「そんなことないよ。ほら、ほら、ゲームしよう」
太郎はそう言って、ゲームの音量を上げたが、心の中では、三郎の言葉が気になっていた。
「ねぇ、太郎。あの音、なんだ?」
次郎が、何かを聞いたような顔をする。
「何の音?」
太郎が尋ねると、次郎は何も言わずに、ただこちらを見ていた。
「ほら、聞こえるだろ。誰かいる…」
三郎が、震える声で言った。
太郎は、息を潜めて耳を澄ませた。すると、確かに、どこからともなく、かすかな足音が聞こえてきた。
「誰だ!」
太郎が、勇気を振り絞って叫んだが、返事はなかった。
「もう、帰ろうよ…」
次郎が、泣きそうな声で言った。
太郎と三郎も、恐怖を感じていた。彼らは、急いで秘密基地から飛び出し、暗闇の中を必死に走り出した。
次の日、太郎たちは、昨日のことを話すのを避けた。でも、心の中では、昨日の出来事が忘れられなかった。
それからというもの、太郎たちは、秘密基地には近づかなくなった。
そして、数日後、太郎は、新聞で恐ろしい記事を見つけた。
「近所の山で、子供の遺体が発見される」
記事には、発見された場所が、自分たちの秘密基地の近くであることが書かれていた。
太郎は、体が震えた。
「まさか…」
太郎は、昨日の出来事を思い出した。
「あの足音は…」
太郎は、恐ろしい想像をしてしまった。
それから、太郎は、いつも悪夢にうなされていた。
秘密基地で聞いた足音、新聞記事、そして、見つけられた子供の遺体。
これらの出来事は、太郎の心に深い傷跡を残した。
太郎は、もう二度と、あの秘密基地には行けなくなった。
太郎は、あの恐ろしい出来事から数ヶ月が経っても、心の傷は癒えていなかった。夜になると、秘密基地での出来事がフラッシュバックし、悪夢にうなされる日々が続いた。
そんなある日、太郎は、勇気を振り絞って、再び裏山へと足を運んだ。
「もう、怖くない。きっと、何もない」
そう自分に言い聞かせながら、太郎は、秘密基地があった場所へと近づいていく。
しかし、秘密基地があった場所には、何も残っていなかった。倒れていた木も、葉っぱで作った屋根も、全て消え去っていたかのように、何もなかった。
太郎は、がっかりすると同時に、安堵の気持ちも感じた。
「もう、何もないんだ」
そう呟きながら、太郎は、その場から立ち去ろうとしたその時だった。
足元から、何かが光っているのに気がついた。
それは、小さな人形だった。
太郎は、恐る恐る人形を拾い上げた。
人形は、見覚えがあった。
それは、数ヶ月前に新聞で見た、発見された子供の遺体のそばにあった人形だった。
太郎は、その人形を握りしめ、再び悪夢を見るようになった。
そして、ある夜、太郎は、夢の中で、秘密基地に再び足を踏み入れた。
そこには、自分と同じ年頃の少年が立っていた。
少年は、太郎を見て、微笑んだ。
「また、遊びに来たの?」
少年の言葉に、太郎は、背筋が凍りついた。
「誰だ、お前は!」
太郎が叫ぶと、少年は、ゆっくりと太郎に近づいてきた。
「僕は、この山の精霊だよ。君たちが秘密基地を作ったことで、この山は怒ってしまったんだ」
少年は、そう言うと、薄笑いを浮かべた。
「だから、君たちを罰したんだ」
少年の言葉に、太郎は、恐怖で震え上がった。
「助けてくれ!」
太郎は、必死に叫んだが、少年の姿は、徐々に薄れていき、最後は、消え去ってしまった。
翌朝、太郎は、冷や汗をかいて目を覚ました。
太郎は、もう二度と、裏山には近づかないと心に誓った。
そして、太郎は、大人になるまで、あの恐ろしい体験を誰にも話すことはなかった。
しかし、太郎の心の中には、いつまでも、山の秘密基地の恐ろしい記憶が残っていた。
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