最近、会社近くの弁当屋に足が向かう。理由は特にない。ただ、あの店の弁当が妙に口に合うのだ。揚げ物の衣はサクサク、煮物は出汁がしみ込んでいて、ご飯はふっくらと炊きあがっている。どれも家庭的な味わいで、どこか懐かしい。
店はこじんまりとしているが、いつも客で賑わっている。特に人気なのは、日替わり弁当だ。毎日違うメニューが楽しめ、飽きることがない。
ある日、日替わり弁当を開けてみると、おかずの中に見慣れないものが混ざっていた。よく見ると、それは小さな人形だった。
人形は、木でできており、素朴な顔をしている。どこか懐かしいような、見たことのあるような気がする。
「これは何だろう?」
不思議に思いながら、店主に尋ねてみた。
「あ、それですか。これは、お客さんへのプレゼントなんです」
店主は、にこやかにそう答えた。
「プレゼント?でも、毎日違う人が来ますよね」
「はい、毎日違う人が来るので、毎日違う人形を入れているんです。どれも手作りなんですよ」
店主の話に、ますます興味が湧いた。
「この人形、どこで作っているんですか?」
「それは企業秘密です」
店主は、笑ってそう答えた。
それからというもの、私は毎日、弁当を買うのが楽しみになった。
毎日違う人形が入っているかもしれないという期待感があるからだ。
集めた人形は、すでに十数個になった。
どれもこれも、表情が違い、個性豊かだ。
ある日、ふと疑問に思った。
「どうして、こんなにも手の込んだことをしているんだろう?」
私は、勇気を振り絞って、店主に質問してみた。
「どうして、毎日違う人形を入れるんですか?」
店主は、しばらく考え込んだ後、ゆっくりと話し始めた。
「これはね、私の祖父が始めたことなんです。祖父は、この町で小さな食堂をやっていました。その食堂には、いつも子供がたくさん来ていたんです。祖父は、子供たちに楽しんでもらいたいと思って、毎日違うおもちゃをプレゼントしていたそうです。それが、この人形になったんです」
店主に話を聞いて、私は感動した。
「すごいですね。そんな素敵な話があったなんて」
「はい。祖父の思いを、私はこれからもずっと続けていきたいと思っています」
店主の言葉に、私は深く感銘を受けた。
それからというもの、私は、その弁当屋に通い続けるようになった。
弁当の味もさることながら、そこには、人の温かさが溢れていた。
ある日、弁当を開けてみると、いつもと違うメッセージが添えられていた。
「いつもありがとうございます。これからも、美味しいお弁当を作りますので、食べに来てください」
そのメッセージを見て、私は、じんわりと涙がこぼれた。
私は、この弁当屋で、たくさんの幸せをもらった。
それは、美味しい食事だけじゃなく、人の温かさ、そして、過去の物語だった。
これからも、私は、この弁当屋に通い続け、店主との会話を楽しみながら、美味しいお弁当を味わいたいと思う。
人形は、ただの飾り物ではなく、店主の祖父から続く、この店の歴史と温もりを繋ぐ大切なものだった。そんなことを考えると、毎日食べるお弁当が、より一層美味しく感じられた。
ある日、いつも通り弁当を買おうと店に入ると、店主に呼び止められた。
「いつもありがとうございます。実は、あなたに伝えたいことがあって…」
店主は、少し照れながら話し始めた。
「あの、人形のこと、ずっと気になっていたでしょう?実は、その人形には、それぞれ意味があるんです。例えば、この人形は、幸せを呼ぶと言われていますし、この人形は、健康を守ってくれると言われています」
店主は、そう言いながら、いくつかの人形を取り出して見せてくれた。
「え、本当ですか?」
私は驚きの声を上げた。
「はい。祖父から聞いた話なんですけど、それぞれの形や表情に意味が込められているそうです。だから、毎日違う人形を入れることで、お客さんに色々な幸せを届けたいと思っています」
店主にそう言われて、私は、今まで集めた人形を一通り見返してみた。
確かに、それぞれの形や表情は、どれも違っていて、何かを象徴しているように思えた。
「もしかして、私のために、特別な人形を作ってくれているんですか?」
そんなことを考えて、思わず口にしてしまった。
店主は、少し考え込んだ後、にこやかに頷いた。
「ええ、そうです。あなたには、この人形をプレゼントしたいと思っています」
そう言って、店主は、一つの箱を取り出した。
箱を開けると、そこには、今まで見たことのないような美しい人形が入っていた。
人形は、微笑みを浮かべており、どこか私のことを見守っているようだった。
「これは、あなただけの特別の人形です。この人形が、あなたの毎日を幸せで満たしてくれることを願っています」
店主にそう言われて、私は、感動して言葉が出なかった。
私は、その人形を大切に持ち帰り、いつも見える場所に飾った。
人形を見るたびに、私は、弁当屋で過ごした日々や、店主との温かい交流を思い出した。
そして、私は、この人形が、自分にとって、とても大切なものになったことを実感した。
それからというもの、私は、その弁当屋に通い続けるようになった。
それは、美味しいお弁当を食べるためだけではなく、店主との会話を楽しみ、そして、自分だけの特別な人形と触れ合うためでもあった。
この弁当屋との出会いは、私の人生にとって、かけがえのない宝物となった。
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