怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

海辺の秘密 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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青年の翔太は、海が好きだった。彼は毎日のように、家の近所の海へ足を運び、海と浜辺を眺めるのが日課だった。休日にはお気に入りのカフェで買ったランチを持参し、平日の仕事帰りにはコンビニ弁当を手に、夕飯を浜辺で食べることが多かった。

ある穏やかな日曜日の午後、翔太はいつものように海辺に座り、波の音に耳を傾けていた。突然、何かが視界の端に入り、彼はそちらに目を向けた。そこには、海から流れついた見慣れないものがあった。近づいてみると、それは古びたガラス瓶だった。中には巻かれた紙が入っており、まるで映画の中で見るようなメッセージボトルだった。

翔太は興味津々で瓶を拾い上げ、栓を抜いて中の紙を取り出した。紙には、英語で短いメッセージが書かれていた。「Help me. I'm stranded on an island. - John」翔太は驚きと興奮が入り混じった気持ちで、そのメッセージをじっと見つめた。

「ジョンという名前の誰かが助けを求めている…」翔太はそのメッセージが本物かどうか確かめるために、家に持ち帰ることにした。インターネットで検索してみても、有力な手がかりは見つからなかった。しかし、彼の心の中には、そのメッセージが本物である可能性があるという思いが強く残った。

それから数日後、翔太はまた海辺に行った。彼はメッセージボトルのことを考えながら、夕飯のコンビニ弁当を食べていた。すると、再び何かが浜辺に流れついているのを見つけた。今度は、小さな木の箱だった。翔太はそれを開けてみると、中には古いコンパスと、またしても手紙が入っていた。

「To whoever finds this, please follow the compass. It will lead you to where I am. - John」

翔太はこの出来事が偶然ではないと確信した。彼はコンパスを手に取り、次の休日にその指示に従うことを決意した。コンパスが指し示す方向を辿っていけば、ジョンという人物を助けることができるかもしれないと信じていた。

休日の朝、翔太はリュックサックに必要なものを詰め込み、コンパスを手に海辺へ向かった。コンパスの針はまっすぐに南を指しており、彼はその方向に進むことにした。海岸線を歩きながら、翔太は初めて訪れる場所に胸を躍らせた。

数時間歩いた後、翔太は小さな入り江に辿り着いた。そこには、かつて漁師たちが使っていたと思われる古い船が一隻置かれていた。船には「ジョン」と刻まれた名前が見える。翔太は驚きながらも、その船に乗り込み、海に出ることに決めた。

船を漕ぎ出すと、コンパスの針は少しずつ方向を変え、彼を導くように感じた。翔太はその針に従い、波に揺られながら進んでいった。やがて、遠くに小さな島が見えてきた。コンパスの針はその島を指していた。

島に上陸すると、翔太は周囲を見回した。島は静かで、まるで時間が止まったかのような場所だった。彼は手紙の送り主であるジョンを探し始めた。島を歩き回るうちに、彼は小さな小屋を見つけた。小屋の中には、生活の痕跡があった。食べ物の残り、古びた日記、そしてまたしても手紙が。

「Thank you for finding me. I have been waiting for so long. - John」

翔太はその手紙を見て、ジョンがここでどれほどの時間を過ごしたのかを考えた。彼はさらに島を探索し続けたが、ジョンの姿を見つけることはできなかった。日記を読み進めるうちに、ジョンが何年も前にここに漂流し、助けを求め続けていたことがわかった。

日が暮れる頃、翔太は自分が一人で島にいることを実感した。ジョンがどこかにいるかもしれないという期待と、彼が既にこの世にいないかもしれないという現実が交錯した。翔太は一晩中、焚き火を囲みながらジョンのことを考え続けた。

翌朝、翔太は島を離れることに決めた。彼は持ち帰った日記と手紙を頼りに、ジョンの家族や友人を探すことにした。船で元の場所に戻り、インターネットや図書館で情報を調べ続けた。

数週間後、翔太はついにジョンの家族を見つけ出した。ジョンの家族は、彼が数十年前に失踪したことを知っていたが、詳しいことは何もわからなかった。翔太が見つけた手紙と日記を見せると、彼らは涙ながらに感謝した。

ジョンの家族は、彼が生きていた証を見つけたことで、長年の不安と悲しみから解放されたようだった。翔太はその姿を見て、ジョンを助けることができたと感じた。

翔太自身も、この出来事を通じて、海への愛情がさらに深まった。毎日海を眺めるたびに、彼はジョンのことを思い出し、自分の人生において何が本当に大切なのかを考えるようになった。

その後も翔太は、海辺での時間を大切にし続けた。ジョンの物語を心に刻みながら、彼は海と共に新たな冒険を見つける日々を過ごした。そして、翔太が海を愛する理由は、ただその美しさだけでなく、そこに隠された無数の物語があるからだと気づいたのだった。

翔太の心には、あの日見つけたガラス瓶と、その中のメッセージが永遠に残り続けた。それは、彼の人生において最も不思議で、そして最も感動的な出来事だった。

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