怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

寝るのが大好きな男の子になった話 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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いつも眠るのが嫌だった、元気いっぱいの男の子がいました。夜になると、まだまだ遊び足りない彼は、ぐっすり眠る時間まで、いつもリビングで本を読んだり、おもちゃで遊んだりしていました。

ある日、いつものように近所の駄菓子屋へ行った男の子。そこには、いつも通りの美味しそうな駄菓子が並んでいるはずなのに、見慣れないものが置かれていました。それは、ふかふかとした白い枕です。

「おばあちゃん、この枕、何ですか?」

不思議に思った男の子は、店番のおばあちゃんに尋ねました。

「それはね、好きな夢を見れる枕なのよ」

おばあちゃんの言葉に、男の子は目を丸くします。駄菓子も魅力的でしたが、そんな不思議な枕が1つしかないなんて!誰かに買われてしまう前に、と男の子はそっと枕を手にとりました。

その日から、男の子はいつもより早く布団に入りました。今日は遊園地で思いっきり遊ぶんだ!そう心に決めて、目を閉じます。

すると、そこはカラフルな遊園地。メリーゴーランドがキラキラと輝き、ジェットコースターが轟音を立てて駆け巡っています。
ジェットコースターは、心臓が飛び出すかと思うほどのスリル満点!風を切って駆け抜ける爽快感、今まで味わったことのないような浮遊感がすごくて、何回乗っても飽きない。
観覧車からは、とても大きな遊園地全体が一望できて、まるで鳥になった気分。遠くの山々まで綺麗に見えました。
男の子は夢中で色々な乗り物に乗り、綿菓子を食べ、笑顔があふれていました。

次の日も、また早く布団へ。今度は、怖い夢を見るつもりです。真っ暗な森の中を一人歩く夢、大きなお化けに追いかけられる夢…。ドキドキしながら眠りについた男の子は、想像をはるかに超える恐ろしい夢を見て、ゾクゾクしながらも興奮していました。
見覚えのない、生い茂った木々が天に向かって伸びる、真っ暗な森の中に立っていました。足元には、枯葉が絨毯のように敷き詰められ、歩くたびにサクサクと音を立てます。木々の間からは、不気味な風が吹き抜け、肌をゾクゾクとさせていました。
静寂が支配する中、かすかな足音が聞こえてきます。それは、男の子のすぐ後ろから聞こえてくる、ゆっくりとした、重たい足音でした。心臓が鼓動を早め、男の子は息を潜めます。
足音は、徐々に大きくなり、男の子の背後まで迫ってきました。男の子は、必死に走ります。恐怖に体が震え、足が思うようにうまく動きません。

それからというもの、男の子は寝る時間が楽しみになりました。お金持ちになった夢、宇宙を旅する夢、大好きなヒーローになる夢…。毎晩、違う夢を見て、彼は眠りにつくのが待ち遠しい日々を送ります。

もちろん、お母さんも大喜び。いつも夜遅くまで起きていた息子が、今では一番にお布団に入り、ぐっすり眠るようになったからです。

ある日、男の子は再び駄菓子屋へ。そして、おばあちゃんにあの不思議な枕のことを話しました。

「おばあちゃん、あの枕、すごかったよ!毎日、いろんな夢を見れるんだ」

ところが、おばあちゃんは首をかしげます。

「あらあら、そんなもの売ってないわよ。ここは駄菓子屋でしょう?」

男の子は不思議に思いました。確かに、おばあちゃんはいつも通りの笑顔でそう言います。でも、あの枕は確かにここにあったはず。

一体、あの不思議な枕は何だったのでしょう?男の子は、その謎を解くことはできませんでしたが、毎日、枕をぎゅっと抱きしめながら、眠りにつくのでした。

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