未来をのぞける自動販売機　（怖い話　奇妙な話　不思議な話）

主人公は40代の男性で、キャリアの岐路に立たされていた。会社での昇進を目前にしていたが、長年夢見ていた独立の道に進むか、それとも安定した職場での出世を選ぶか、決断ができずに悩んでいた。

ある夜、いつもの帰り道とは違う道を通り、ふと足を止めると、人気のない薄暗い路地に一台の自動販売機が佇んでいるのを見つけた。古びた外観で、誰かが置き忘れたかのようにぽつんと置かれていたが、その周囲には不思議な雰囲気が漂っていた。

興味を引かれて近づくと、ディスプレイには「未来をのぞけるドリンク」と書かれていた。商品名は、「成功した未来」「平凡な未来」「後悔のない未来」など、未来に関する選択肢が並んでいた。どのボタンを押すべきか迷いながらも、彼は「成功した未来」というドリンクを購入することにした。

ボトルには、未来的なデザインが施されており、見るだけで心が躍るような気分になった。彼はその場でボトルを開け、未来をのぞけるという不思議な感覚に期待しながら一口飲んでみた。

すると、周りの景色がぼんやりと霞んでいき、次第に彼の目の前に未来の光景が浮かび上がってきた。そこには、彼が独立して成功を収め、忙しくも充実した日々を送っている自分の姿があった。自分の会社を持ち、同僚や家族に囲まれて笑顔を浮かべている未来の自分。しかし、その一方で、時折不安そうな表情を浮かべ、何かに悩んでいるようでもあった。

次に彼が見たのは、会社に留まり昇進を果たしたもう一つの未来だった。安定した収入と地位を手に入れ、穏やかな日々を過ごしている自分がそこにいた。しかし、どこか物足りなさを感じているような、燃え尽きたような表情も見え隠れしていた。

彼はその両方の未来を眺めながら、どちらが本当に自分にとっての「成功」なのかを考えた。どちらの道にもそれぞれの幸せがあるが、同時にそれぞれの悩みや迷いもあることを知ったのだ。

現実に戻ると、彼はその場に立ち尽くし、深く考え込んだ。未来のビジョンが示すものは、単なる予言ではなく、自分の選択次第で変わり得るものだと気づいたのだ。そして彼は、自分にとって何が本当に大切なのかを見つめ直し、自らの意志で道を選ぶ覚悟を決めた。

最終的に、彼は独立する道を選んだ。困難な道ではあったが、夢に向かって進むという決意は揺るがなかった。未来のビジョンで見た不安や悩みも覚悟の上で受け入れ、彼は一歩一歩前進していった。

その後、彼が再びあの路地を訪れることはなかったが、もしもまた別の道に迷い込むことがあれば、あの自動販売機が再び姿を現してくれるのかもしれないと、心の片隅で考えることもあった。

それでも彼は、今度こそは自分の力で未来を切り開く決意を胸に抱き、日々の努力を続けていった。未来をのぞける自動販売機との出会いは、彼にとって未来を信じ、自分の選択に責任を持つことの大切さを教えてくれたのだった。

ほんとうにあった怖い話「年上の彼女」

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