怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

地方のビジネスホテルでの体験談 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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数年前、私は地方の工場でのプロジェクトを担当することになり、3ヶ月間その地域に滞在することになりました。その工場は町外れにあり、周囲にはほとんど建物がなく、夜になると静寂が一層際立つ場所でした。私が滞在していたのは、工場から車で20分ほどの距離にある古いビジネスホテルでした。そのホテルもまた、何十年も前に建てられたようで、どこか薄暗く、過去の栄光を感じさせる場所でした。

滞在していた部屋は5階の端の方で、窓からは遠くに工場の煙突が見えるだけの景色でした。毎晩、疲れ果てて部屋に戻り、ベッドに倒れ込むように眠りにつく生活が続いていました。しかし、滞在を始めて1ヶ月が経つ頃、奇妙な出来事が起こり始めました。

ある晩、仕事から戻ってシャワーを浴び、ベッドに横になった時、部屋の天井に視線を感じました。誰もいないはずなのに、どうしても天井に目が行ってしまうのです。天井は白いペイントがされているだけで、特に変わったところもないのですが、何かが「いる」ような感じがして、落ち着きませんでした。結局その夜は眠れず、次の日はさらに疲れが溜まった状態で仕事に向かいました。

それからというもの、毎晩同じ感覚に襲われました。天井から何かが私を見ているような、重苦しい感覚が拭えませんでした。気味が悪くなり、部屋を変えてもらおうかとも考えましたが、当時は仕事が忙しく、また他に空いている部屋も少なかったため、そのまま過ごすことにしました。

ある晩、特に疲れていた私は早めにベッドに入ることにしました。電気を消してしばらくすると、部屋のどこかから小さな音が聞こえ始めました。初めはエアコンの音かと思いましたが、よく耳を澄ませると、それはまるで「誰かが耳元で囁いている」ような音でした。

パニックになった私はすぐに電気をつけ、部屋中を確認しました。しかし、誰もいません。再び電気を消すと、その囁き声がまた聞こえてきました。今度ははっきりと女性の声で、何かを呟いているのです。私は布団を頭から被り、声が止むのを待ちました。時間がどれだけ経ったのか分かりませんが、声は次第に小さくなり、やがて聞こえなくなりました。

翌朝、寝不足の状態でフロントに行き、スタッフにこのことを話しました。スタッフは表情を曇らせ、「実は、その部屋に泊まったお客様からは、以前にも似たような話が聞かれたことがあります」と言われました。
そのお客さんも特に何があったわけでもなく、声に似たような音がどこかでなってしまう部屋なのかと言われ、詳しいことは教えてもらえませんでしたが、その言葉を聞いて私はすぐに部屋を変えてもらいました。

新しい部屋に移った後は、特に奇妙な出来事もなくなり、安心して眠れるようになりました。仕事が無事に終わり、帰宅した時は本当にほっとしましたが、あのホテルでの体験は今でも鮮明に覚えています。

後で調べてみると、そのホテルが建つ前、その土地には古い神社があったという話を耳にしました。今となっては確かめようもありませんが、あの囁き声がどこから来たのかを考えると、今でも背筋が寒くなります。

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