これは、私が数年前、友人たちと一緒に山登りをした時の出来事です。その山は、標高がそこまで高くなく、初心者でも比較的簡単に登れるとされていた山で、私たちは軽い気持ちで登ることにしました。夏の終わりで、気候も穏やかで登山日和でした。
私たちは朝早くに登山を開始し、順調に登っていきました。道中、自然の美しさに感動し、鳥のさえずりや木々のざわめきに癒されながら、登山を楽しんでいました。しかし、山頂に近づくにつれて、天候が急に変わり始めました。空が急速に暗くなり、厚い雲が空を覆い尽くしました。
突然、冷たい風が吹き始め、山の中は一気に寒さが増しました。私たちは一瞬立ち止まり、進むべきかどうかを迷いましたが、山頂まではあと少しだと考え、登山を続けることにしました。しかし、数分も進まないうちに霧が立ち込め、視界が一気に悪化しました。まるで霧が生き物のように私たちを包み込み、周囲が真っ白になってしまいました。
霧の中を進むと、道が次第に険しくなり、足元が滑りやすくなりました。私たちは慎重に足を運びましたが、進めば進むほど、どこか不安感が増していきました。視界が悪いため、道を見失いそうになり、誰もが緊張していました。
その時、ふと背後から「ザザザ…」と何かが地面を這うような音が聞こえてきました。私たちは全員、その音に気づき、振り返りましたが、霧が濃くて何も見えませんでした。誰かが「何かが後ろにいるんじゃないか?」と不安そうに言いましたが、確かめる術もなく、再び歩き始めました。
しかし、その音は私たちが進むたびに後ろからついてくるようで、次第に音が大きくなっていくのが分かりました。全員が異様な緊張感に包まれ、恐怖で言葉を失いました。霧の中、私たちはただ無言で進むしかありませんでしたが、後ろから何かが迫ってくるような感覚はますます強くなっていきました。
突然、友人の一人が「誰かが俺の肩を掴んだ!」と叫びました。驚いて振り返ると、彼は真っ青な顔で立ち尽くしていました。もちろん、周りには誰もいません。彼はそのまま動けなくなり、私たちは急いで彼を支えて、その場を離れることにしました。
さらに進むと、今度は別の友人が急に立ち止まりました。「道が…なくなってる」と呟いた彼の視線の先には、霧の中にぽっかりと空いた大きな崖が見えました。ほんの数メートル先には、道が完全に途切れ、深い谷が広がっていたのです。もしあのまま進んでいたら、全員が谷底に落ちていたかもしれません。
私たちは恐怖で震えながら、来た道を戻ることにしました。しかし、戻り始めた途端、再びあの「ザザザ…」という音が背後から聞こえてきました。もう限界だと思い、私たちは一斉に走り出しました。霧の中を必死で駆け抜け、やっとの思いで安全な場所まで戻りました。
その瞬間、霧がすっと晴れ、周囲の景色が見えるようになりました。恐怖と安堵の中で、全員が肩で息をしながら地面に座り込みました。あの音が何だったのか、友人が感じた肩を掴む感覚が何だったのか、今でも謎のままです。ただ、その山には何か不気味な力が存在していたとしか思えませんでした。
帰り道、私たちは全員が無言で、ただ無事に戻れたことを感謝するばかりでした。それ以来、私は山に登る際には天候の変化に細心の注意を払い、何か異様な気配を感じた時は無理をせずすぐに引き返すことを心に決めました。
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