これは、ある若い夫婦が体験した話です。夫婦の趣味は一緒に山登りをすることで、休日にはよく近郊の山を訪れていました。彼らは登山を楽しむだけでなく、山頂からの絶景をスマホで撮影し、SNSにアップすることも楽しみの一つにしていました。
ある秋の日、紅葉が見頃の時期に、夫婦は少し遠出をして人気のない静かな山へ登ることにしました。観光地化されていないその山は、人も少なく、自然そのものの風景が楽しめる場所でした。二人はいつものようにお弁当を持参し、のんびりと紅葉を楽しみながら登山を開始しました。
山道は比較的整備されていましたが、登るにつれて道が少しずつ狭くなり、木々が生い茂る中、ひっそりとした雰囲気に包まれていきました。途中、休憩を取りながらも、紅葉の美しさに見とれつつ、順調に山頂へ向かいました。
山頂に到着すると、澄んだ青空と、眼下に広がる紅葉の海が見渡せる絶景が広がっていました。二人は感動しながら、その景色を写真に収めました。スマホで何枚も撮影し、お互いにポーズを取って記念写真を撮り合ったりと、楽しい時間を過ごしました。
その後、持参したお弁当を広げ、山頂でゆっくりとランチタイムを楽しんだ後、帰り道に差し掛かりました。下山しながら、二人は撮影した写真をスマホで確認していました。しかし、写真を見ているうちに、妻が突然不安げな表情を浮かべました。
「ねえ、この写真、何か変じゃない?」と妻が言いました。彼女が指差したのは、二人で撮った山頂での記念写真でした。写真には二人が笑顔で写っていたのですが、その背後に、ぼんやりとした影のようなものが映り込んでいたのです。
「ただの木の影じゃないか?」と夫は言いましたが、何かが引っかかるような感覚がありました。写真を拡大してみると、その影は人のような形をしており、まるで二人のすぐ後ろに立っているように見えました。しかし、彼らがその場で撮影した時には、周囲には誰もいなかったはずです。
「気味が悪いね…」と言いながら、二人はその写真を削除しました。少し不安な気持ちを抱えつつも、山を下りることにしました。帰り道は無事で、やがてふもとの駐車場にたどり着きました。
帰宅後、二人は一日の疲れを癒しながら、再び撮影した写真を確認していました。すると、夫が「おかしいな…」と呟きました。削除したはずの写真がスマホのギャラリーに復元されていたのです。驚いた二人は再び写真を確認しましたが、影はさらに鮮明になっており、今度ははっきりと人の輪郭が浮かび上がっていました。
その影は不自然なほど真っ黒で、まるで顔が潰れているように見えました。しかも、影の人物が二人をじっと見つめているような視線を感じたのです。恐怖に駆られた夫婦はすぐにその写真を削除し、スマホのデータを完全に消去しました。
その夜、夫は夢を見ました。夢の中で、彼はあの山の頂上に立っていました。周囲は薄暗く、紅葉も枯れ果てたように見えました。彼が振り返ると、あの写真に映っていた黒い影がすぐ後ろに立っており、じっとこちらを見つめていました。その姿は異様に歪んでおり、口元がかすかに動いて何かを囁いているようでした。恐怖で身動きが取れなくなったところで、彼は目を覚ましました。
彼が目を覚ますと、隣で眠っていた妻も同じようにうなされていました。彼女も同じ夢を見たと言い、二人は一層恐怖に包まれました。それ以来、彼らはその山には近づかないことに決めました。
その後、友人たちにこの出来事を話したところ、「あの山には昔、村があって、多くの人が亡くなったって噂がある」と聞かされました。あの影が何だったのか、なぜ写真に映り込み続けたのかは今もわかりません。しかし、あの場所で撮影した写真だけは、二度と確認する気にはなれないと言います。
写真は思い出を記録するものですが、時には不気味なものも映し出してしまうのかもしれません。あの影が二度と彼らに近づかないことを願いながら、夫婦は今も山登りを続けていますが、あの出来事だけは忘れることができません。
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