私の実家には、長年立ち入り禁止とされている屋根裏部屋があった。幼い頃から、両親に「絶対に入ってはいけない」と厳しく言われており、その言葉に従ってきた。兄弟も誰一人として屋根裏部屋に入ったことはない。なぜ入ってはいけないのか、理由を聞いても、「危ないから」と曖昧な答えが返ってくるだけだった。
しかし、大人になり実家に帰省するたび、その屋根裏部屋の存在が頭から離れなくなっていった。あの部屋には一体何があるのだろう? もしかしたら、家族が隠している何か重大な秘密があるのかもしれない。そんな思いが膨らんでいった。
ある夏の日、私はついにその屋根裏部屋に入る決意をした。両親はすでに他界しており、今やその家には誰も住んでいない。私は一人で実家に帰り、幼い頃から気になっていたその扉の前に立った。長い年月を経て埃まみれになった屋根裏部屋の入り口は、薄暗い廊下の奥にひっそりと佇んでいた。
錆びついた鍵を回し、重たい扉をゆっくりと開けると、古びた木の香りとともに冷たい空気が流れ込んできた。屋根裏部屋は予想以上に広く、天井からは一本の裸電球がぶら下がっていた。スイッチを入れると、ぼんやりとしたオレンジ色の光が部屋全体を照らした。
部屋の中には、古い家具やダンボール箱、雑多なものが散らばっていた。埃をかぶった人形や壊れかけた椅子、そして何冊ものアルバムが積み上げられていた。私はアルバムの一つを手に取り、中を開いてみた。
アルバムには、古い家族写真がたくさん収められていた。そこには、私の両親や祖父母、そして幼い頃の私たち兄弟の姿が写っていた。どれも懐かしい写真だったが、その中に一枚、見覚えのない家族の写真が混じっていた。
その写真は、明らかにこの家のもので、リビングと思われる場所で撮影されていた。しかし、写っている家族は私たちではなく、見知らぬ男女と子供たちだった。写真の端には「1972年」と日付が記されており、どうやら私たち家族が住む前にこの家に住んでいた家族のものらしい。
しかし、その写真には奇妙な点があった。家族全員がカメラに向かって微笑んでいる中で、一人だけ、まるで背景に溶け込むように立っている人物がいたのだ。それは、家族の誰とも違う、薄い影のような存在だった。その影は、中央に立つ子供の後ろにぼんやりと浮かび上がっており、顔ははっきりと写っていなかったが、じっとこちらを見つめているように感じた。
不気味さを感じた私は、アルバムを閉じて元に戻そうとした。しかし、その時、部屋の隅で何かが動いた気配を感じた。恐る恐る目を向けると、そこには古びた人形が置かれていた。その人形は、私が小さい頃に見かけた記憶があるが、なぜかその時の人形とは少し違って見えた。顔がかすかに歪み、目が妙に暗く沈んでいるように見えたのだ。
不安が胸をよぎり、私はその場を離れようとしたが、ふと何かに引き寄せられるように、再び写真に目を向けた。そして、その瞬間、私は息を呑んだ。先ほど見たあの家族写真の影が、今度ははっきりと目に映っていたのだ。それは、まるで写真の中からこちらを覗き込むように、顔をこちらに向けていた。
恐怖で全身が凍りついた私は、そのまま部屋を飛び出した。廊下を駆け下り、息を切らしながら実家を後にした。後ろを振り返る勇気はなかった。ただ、その時確信したのは、あの影は「そこにいる」ものだったということだ。
後日、私は地元の資料館でこの家の過去について調べてみた。そして、驚くべき事実を知ることになった。1970年代、この家には一家全員が住んでいたが、ある日を境にその家族は突然失踪したという。警察の捜索でも手がかりは一切見つからず、結局未解決事件として処理されたそうだ。その家族が最後に撮影した写真が、あのアルバムに残されていたものだった。
なぜその家族が失踪したのか、なぜその写真がうちの家族の写真と一緒に保管されていたのか、今でも謎のままだ。しかし、あの写真に写っていた「影」は、何かを伝えようとしていたのだろうか。それとも、ただそこに居続けているだけなのだろうか。
いずれにしても、私はもう二度とあの屋根裏部屋に足を踏み入れることはないだろう。そこには、私たちの知らない「もう一つの家族」が、今も静かに暮らしているのかもしれない——。
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