ある山奥の村には、「消えた道」と呼ばれる場所があります。そこは地元の人々が決して近づこうとしない、夜になると忽然と現れる不気味な一本道です。噂によれば、その道を歩くと必ず何かに導かれるように迷い込み、二度と元の場所に戻れなくなるというのです。
この奇妙な道の存在を知ったのは、村を訪れた都市伝説マニアの青年、裕也でした。彼はこの「消えた道」の話を耳にし、好奇心に駆られて調査を始めました。村人に話を聞くと、彼らは皆一様に顔を曇らせ、「絶対に夜には山に入るな」と忠告しました。しかし、忠告を無視した裕也は、深夜にその道を探しに出かけました。
古い山道を進むうちに、ぽっかりと開けた空間が現れました。そこにはまっすぐ続く細い道が一筋だけ、霧の中に伸びています。昼間には見当たらなかったこの道が、夜になると現れることに彼は興奮しました。
「これが噂の道か……」と、彼は意気揚々とその道を進み始めました。道は狭く、両側には鬱蒼とした木々が生い茂っています。足元には落ち葉が積もり、歩くたびにカサカサと不気味な音が響きます。
しばらく進むと、背後から誰かがついてくるような気配を感じました。振り返ると、そこには誰もいません。しかし、確かに足音が聞こえるのです。心臓がドキドキと早鐘を打つ中、裕也は歩みを止めず、さらに奥へと進みました。
すると、霧の中からぼんやりと明かりが見えました。それは古びた街灯のようで、その下にはポツンと木製のベンチが置かれています。そのベンチには、薄暗い中でうつむいて座っている人影がありました。
裕也は恐る恐る近づき、「すみません、ここはどこですか?」と声をかけました。人影はゆっくりと顔を上げましたが、その顔はぼやけていて、まるで顔のパーツが曖昧になっているようでした。
その瞬間、背筋に寒気が走り、裕也は無意識に一歩後ずさりました。その人影が低い声で囁きました。「戻れないよ……ここに来たら……」
恐怖に駆られた裕也は、来た道を一気に駆け戻りました。しかし、いくら走っても元の場所にたどり着けません。道はねじ曲がるように伸び、出口がどこにも見当たりません。気づけば、同じ街灯とベンチの前に戻ってきてしまいました。
そのベンチには、さっきとは別の人影が座っています。今度は明らかに裕也の方を向いており、笑っているように見えました。その笑みは徐々に広がり、顔全体が不自然に歪んでいきます。
恐怖のあまり、裕也はその場で倒れ込み、気を失いました。次に目を覚ました時、彼は村の外れにある林の中にいました。奇妙なことに、彼が歩いた道の痕跡は一切残っておらず、まるで最初から存在しなかったかのようでした。
後日、裕也は「消えた道」の正体について調べ続け、やがて恐ろしい過去の事件に行き着きました。
それは今から50年前、この村で起きた失踪事件でした。夜になると村から山道を抜け、どこかへ消えてしまう住民が続出しました。捜索隊が何度も山を探しましたが、行方不明者は一人も見つかりませんでした。唯一の手がかりは、村人たちが夜に「霧の中で道が現れ、何者かに誘われる」という証言でした。
最終的に、この「道」は村の過去に囚われた霊たちが作り出したものであり、道に迷い込んだ者を次々と取り込み続けていると言われるようになりました。それ以来、村では夜間に山に入ることが厳禁となったのです。
裕也はこの事件を記事にまとめましたが、最後に彼自身も村を再訪し、再び姿を消しました。村人たちは口を揃えて言います。「あの道はまだ誰かを待っている」と。
そして今夜も、霧が出ると、その道はひっそりと姿を現し、次の犠牲者を静かに待ち続けています——。
都市伝説は時に、忘れられた過去の真実を映し出す鏡のようなものです。もしもあなたが霧の中で見慣れない道を見つけても、決して進んではいけません。その先に待つものが、あなたを永遠に閉じ込めるかもしれないからです。
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