それは、ある夏の終わり頃から始まりました。最初の夜、私はいつも通り眠りについていましたが、深夜に突然目が覚めました。体が重く、指一本動かせません。「また金縛りだ」と思いつつ、目を閉じてやり過ごそうとしました。しかし、その夜は何かが違いました。
耳元で、かすかな声が聞こえたのです。低く、何かを呟いているような、でも内容ははっきりと聞き取れないものでした。無理やり気にしないようにして、なんとか眠りにつくことができましたが、その翌晩も同じことが起こりました。やはり、深夜に目が覚め、全く体が動かない状態の中で、あのかすかな囁きが聞こえます。今度は少しだけ音が近く感じましたが、それでも何を言っているのかは分かりませんでした。
3日目、同じ金縛りが再びやってきました。囁き声は、前日よりも明確に聞こえ、何かを繰り返し言っているようでした。それは「こ…」とか「し…」といった断片的な音で、全体像は掴めませんが、不気味な感覚が次第に強まっていきます。恐怖に包まれながらも、体は全く動かず、ただその声を聞くしかありませんでした。
4日目、再び金縛りに遭い、その囁きはさらに明瞭になりました。「ここ…ここに…」と、断片的ですが明確な言葉が聞こえ始めます。全身に冷たい汗が滲み、心臓の鼓動が耳に響く中、その声が次第に近づいてきます。私は目を閉じ、必死にその場から逃れようとしましたが、声は私の耳元で「ここにいる…」と繰り返していました。
5日目、私はもう眠るのが怖くなっていました。しかし、疲れが溜まり、結局寝落ちしてしまいました。案の定、深夜に目が覚めると、また体が動きません。そして、その夜の囁き声は、はっきりとこう言いました。「ここにいる…待っている…」。それは明らかに私に向けたメッセージでした。恐怖に震えながらも、言葉の意味を理解してしまった瞬間、全身が凍りつきました。
6日目、もはや逃れられないと感じつつ、再び金縛りに襲われました。囁き声はさらに明確で、今度は「来て…ここに…」と繰り返されました。声が途切れると、私はついに目を開けてしまいました。しかし、何も見えませんでした。ただ、言葉の意味が次第に私の頭に深く刻まれていくような感覚だけが残り、恐怖に苛まれながら夜を過ごしました。
その後、私はどうにかしてこの状況を打破しようと、寝る前にお守りを枕元に置くなど、さまざまな対策を試しました。それ以来、囁き声は次第に遠ざかり、金縛りも収まっていきましたが、最後に囁かれた「ここに来て…」という言葉だけは、今でも頭の中で響いています。あの声の主は一体誰だったのか、そしてどこへ「来い」と言っていたのか…。それを考えるたびに、背筋がぞっとします。
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