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【変わりゆく記憶の迷宮】—毎朝異なる人生を生きる恐怖の物語— (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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目が覚めた時、私はいつものベッドにいた。しかし、微妙な違和感が胸を刺す。寝室のインテリアが昨日と少し違っているような気がした。頭の中で「昨日」という記憶を辿ってみるが、どうも曖昧だ。違和感を感じながらも、私は普段通りに身支度を整えた。

朝食を取りながらスマートフォンを確認していると、あるメッセージが目に留まった。それは、親友の誠からのもので、内容は「昨日の映画、楽しかったな。また行こう」というものだった。だが、私は昨日、誠とは会っていないはずだ。

「映画なんて見に行ったかな…?」

不安を抱えつつも、気のせいだろうと自分に言い聞かせてその日は過ぎていった。しかし、翌日、再び目が覚めると、さらに奇妙なことが起きていた。今度は、誠の存在自体が私の記憶からぼやけていた。彼とは長年の友人だったはずなのに、どこか他人行儀な感覚が生じている。そして、代わりに別の友人――「美香」という名前が私の記憶に強く残っていた。しかし、美香とは今まで一度も会った覚えがない。

その日もまた、私の生活は何事もなく過ぎていく。しかし、ふとした瞬間に過去の記憶と目の前の現実が微妙にずれ始めていることに気づく。思い出の中の出来事が、いつの間にか別の形に変わっているのだ。友人、家族、仕事の内容すらも、少しずつ異なる方向へと歪んでいく。

毎朝、目覚めるたびに記憶が違っていく。昨日までは一つの人生を送っていたはずなのに、翌日にはまるで別の人生を生きている。ある日は既婚者として目覚め、別の日には独身だったり、仕事も変わっていることがある。はじめは悪夢かと考えたが、それが現実であることに次第に確信を持つようになった。

混乱が極限に達した私は、記憶を失う恐怖から毎日日記をつけるようになった。しかし、その日記ですら、翌日には別の内容になっている。昨日書いたことが今日には存在せず、代わりに別の出来事が書き込まれている。まるで、私の人生そのものが別の何かによって書き換えられているようだった。

次第に私は理解した。この奇妙な変化は、私が「平行世界」を移動しているからだ。それぞれの世界で、私は微妙に異なる人生を送っている。いくつもの世界を渡り歩いているうちに、元の世界に戻る手がかりを失い、無限の迷宮に迷い込んでいるのだ。

ある日、再び目覚めた私は、見知らぬ部屋で目を覚ました。まったく記憶にない場所だ。そこには、私のことを知っているらしい見知らぬ男女がいて、私を名前で呼びかける。しかし、私は彼らを全く覚えていない。彼らは家族だと主張し、私の混乱をよそに、いつものように会話を続ける。

その瞬間、恐怖が胸を締め付けた。どこが「現実」なのかが完全に分からなくなったのだ。私はもう、元の世界に戻ることはできないかもしれないという恐怖に囚われる。自分がどの世界に属していたのか、何が本当の記憶なのか、全てが曖昧になっていく。

やがて、私はどの記憶も信じられなくなった。過去が毎朝違うものに塗り替えられる中で、私はただ目の前にある現実を受け入れるしかなくなった。だが、その現実ですら、次の日には別のものになってしまうことを知っている。

最後に、私は日記を閉じ、鏡に映る自分を見つめた。そこにいるのは、私が知っているはずの自分ではない。違う世界で、違う人生を生きている私だ。これが、私の運命なのだろうか。永遠に終わりのない、この無限の「別の世界」を渡り続ける運命なのかもしれない。

翌朝、再び目が覚める。今日はどんな世界が待っているのだろうか。

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