その夜、ベッドでくつろいでいると、突然スマートフォンが鳴った。見慣れない番号だ。深夜に電話がかかってくること自体が不気味で、ためらいながらも通話ボタンを押した。
「○○さん…ですか？」
私の名前を呼ぶ低い声が聞こえてきた。どこか不安定で歪んだ声。まるで、遠くから聞こえてくるようだ。私は言葉を返さず、即座に電話を切った。
翌日、同じ時間にまたその番号からの着信があった。不気味さが募る中、今回は無視をした。しかし、その翌日も、またその次の日も、電話は毎晩同じ時間にかかってくる。無視していると、ある晩、留守番メッセージが残されていた。恐る恐る再生してみると、その声はこう言っていた。
「次にあなたがすることは、会社のカフェでコーヒーを買うことだ。いつものように砂糖を一つ入れて。」
私は言葉を失った。その日は確かに会社のカフェでコーヒーを買おうと考えていたからだ。偶然かもしれないと自分に言い聞かせたが、不安は消えなかった。
次の日、私はあえてコーヒーを買わずに仕事を続けたが、午後になると突然頭痛に襲われた。結局、耐えきれずにカフェへ行き、いつものように砂糖を一つ入れて飲んだ。すると、頭痛は嘘のように引いた。
それ以降、電話の内容はますます具体的になり、私の日常の行動を事前に予言するようになった。最初は些細な指示だったが、徐々にその内容は私の人間関係や職場での決断にまで及んできた。
「今日は田中さんに近づかないでください。彼はあなたを裏切ります。」
言われた通りにしたところ、数日後に田中さんが不正をしていたことが発覚し、私はその巻き添えを食らわずに済んだ。恐怖と不気味さは日々増していくが、その声が伝える「助言」は現実の出来事と見事に一致していた。
しかし、ある日、その電話が不吉な内容を告げた。
「次の月曜日、会社を辞めてください。そして、すぐに街を出なさい。さもないと、あなたは破滅します。」
突然の指示に戸惑い、無視しようと決めた。しかし、月曜日が近づくにつれて、妙な圧迫感と不安が胸に広がる。もし、この警告が本当だとしたら――。
月曜日の朝、電話は再び鳴り響いた。ついに私は恐怖に耐えきれず、電話に出てしまった。
「あなたは、もう私の言う通りにするしかない。」
その声にはこれまでになく強い圧があり、逃れられない力を感じた。私は仕事を辞める決意を固めたが、電話は次の指示を続けた。
「次は、あなたの家を売り払い、全てを捨てて新しい場所へ行くんです。」
理性が声を上げた。この指示に従っていいのか？私は自問自答し、ついにその電話の声に反論した。
「お前は誰だ？なぜ俺をこんな風に操るんだ？」
電話の向こうの声は、冷ややかに笑った。
「私は、あなたです。正確には、未来のあなた。私はあなたの人生を変えるためにここにいる。あなたが今、全てを捨てなければならない理由があるんです。」
その言葉に衝撃が走った。だが、その声は続けた。
「私の目的はただ一つ。私が今いるこの地獄から抜け出すために、今のあなたを犠牲にすることなんだ。あなたが今の人生を続ければ、最終的に私は破滅します。だから、あなたの人生を狂わせてでも、私は生き延びたいんです。」
冷や汗が背中を伝う。未来の自分が、今の私を操り、自分を救おうとしている？しかし、それは私を気持ち、心を「消す」ことを意味している。私は、これ以上その指示に従うわけにはいかない。
「俺は、絶対にお前の言う通りにはしない！」
叫びながら、私は電話を壁に投げつけた。しかし、直後に頭痛が再び襲いかかり、視界が暗転した。気がつくと、私は床に倒れていた。電話は壊れておらず、無情にもまた鳴り響いていた。
「あなたには選択肢はありません。どちらにしても、私が勝つんです。」
その声を最後に、電話は切れた。私は震える手でスマホを握りしめ、恐怖に耐えながら決断を迫られている。この「未来の自分」に抗うことができるのか、それとも私はこのまま操られてしまうのか。
マンガ無料立ち読み
マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40％ポイント還元中
1冊115円のDMMコミックレンタル！
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ！
ムームーサーバー
新作続々追加！オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
 |
 | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |
