怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

廃屋に潜む恐怖:子供たちが“人形の館”で体験した戦慄の一夜 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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僕たちが住んでいる町には、少し外れたところに古びた廃屋があった。誰も住んでいないその家は、子供たちの間で「人形の館」と呼ばれていた。なぜそう呼ばれているのかというと、その家の中には大量の人形が飾られているからだ。日本人形、洋人形、おもちゃの人形など、様々な人形が窓越しに見える。みんなその家を怖がり、決して近づこうとはしなかった。

でも、やんちゃな友達のケンジは違った。彼は怖いもの知らずで、いつも無茶な冒険を提案してくる。そしてその日、僕とタカシ、ユウタ、そしてケンジの4人で「人形の館」に侵入しようという話になった。僕は正直、嫌な予感がしていたけど、みんなが行くと言うので断れなかった。

夕方、薄暗くなり始めた頃、僕たちは「人形の館」に向かった。家は古く、壁はひび割れていて、草が生い茂っている。近づくと、何とも言えない不気味な雰囲気が漂っていた。僕は足がすくんでしまい、後ろに下がりたかったけど、ケンジが「何ビビってんだよ!」と笑いながら先頭に立ち、僕たちを引っ張った。

家の正面の玄関は鍵がかかっていたが、ケンジが裏口から回ってみると、鍵が壊れていて簡単に入れた。薄暗い廊下に足を踏み入れると、かすかに木が軋む音が聞こえた。家の中は静まり返っていて、まるで時間が止まっているようだった。

「見てみろよ!」ケンジが指さした先には、リビングが広がっていた。そこには、噂通り無数の人形が置かれていた。畳の上に整然と並べられた日本人形、大きな洋人形、そして壁際に積まれたおもちゃの人形たち。そのどれもが無表情で、こちらを見つめているように感じた。

「気持ち悪いな…」ユウタが小さな声で言った。僕もその場に立ち尽くし、人形たちの視線を感じながら、全身に鳥肌が立った。特に、部屋の隅に座っていた大きな日本人形の目が、僕にはずっとこちらを追っているように見えた。

「へっ、ただの人形じゃん。怖がってる場合じゃねえぞ!」ケンジはそう言うと、部屋の奥に歩いて行った。タカシとユウタも続き、僕も仕方なく後を追った。

すると、奥の部屋から不意に「ザッ…ザッ…」という音が聞こえてきた。僕たちは一瞬凍りついた。誰も何も言えないまま、音の方を見つめた。ケンジが恐る恐る扉を開けると、そこにはさらに多くの人形が並べられていた。壁にはびっしりと人形が飾られ、その中には古びた着物を着たものや、目がうつろなものもあった。

「やっぱり、ここ、ヤバいんじゃない?」タカシが震えた声で言ったが、ケンジは「大丈夫だって!」と笑って、部屋の中央にあった小さなテーブルに歩み寄った。そこでケンジは、古い写真を見つけた。それは、この家にかつて住んでいた家族の写真だった。家族は幸せそうに笑っているが、その後ろに、何か黒い影がぼんやりと写り込んでいた。

「これ、なんだよ…」ユウタが不安げに言った。その瞬間、部屋の隅で「コトッ…」と何かが落ちる音がした。僕たちは全員息を呑んで音の方を見た。そこには、さっきまで座っていた日本人形が倒れていた。誰も触っていないのに、まるで勝手に動いたように見えた。

「もう帰ろうよ!」僕は耐えきれず叫んだ。みんなも同じ気持ちだったのか、ケンジでさえ顔が青ざめていた。僕たちは慌てて玄関に向かって走り出したが、その時、廊下の奥から「カタ…カタ…」と何かが床を引きずる音が聞こえてきた。

「やばい、急げ!」ケンジが叫び、僕たちはパニック状態で走った。背後で「カタ…カタ…」という音が近づいてくるのが分かる。誰も振り返らずに、ただ出口に向かって全力で駆け抜けた。

玄関を飛び出し、外に出た瞬間、音はピタリと止んだ。僕たちはゼーゼーと息を切らしながら、振り返った。廃屋の中は暗く静まり返り、人形たちが並ぶ姿が窓越しに見えた。その中でも、あの日本人形の目だけが、窓から僕たちを見つめているように感じた。

その夜、僕たちは怖くて誰も眠れなかった。翌日、ケンジたちと話したが、誰も二度とあの廃屋に行くつもりはなかった。あの「人形の館」には、何か不気味な力が働いている——そんな気がしてならなかった。

そして、時々夢に見るのだ。あの日本人形が、じっと僕を見つめ続けている夢を——。

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