リゾートバイトで見つけた謎の地下室…日記に書かれた『逃げられない』という恐怖の言葉とは？　（怖い話　奇妙な話　不思議な話）

これは、大学生のCさんが、山奥の温泉旅館でリゾートバイトをしたときの話です。その旅館は歴史ある建物で、古風な趣と美しい庭園が特徴でした。温泉も有名で、毎年多くの観光客が訪れます。Cさんはフロントや接客を担当することになり、緊張しつつも楽しみにしていました。

旅館は少し山奥にあり、周囲は夜になると真っ暗です。最寄りの街からも離れており、自然の中にぽつんと佇むような場所でした。Cさんは、同じくバイトに来ていた他の大学生たちともすぐに仲良くなり、日中は楽しく働いていました。

しかし、Cさんが働き始めてから1週間ほど経った頃、奇妙な出来事が起こり始めました。

その日、Cさんは夜の見回り当番を任されていました。旅館では、夜間に宿泊客が困らないよう、スタッフが定期的に館内を巡回する決まりがありました。古い建物なので、時折設備に不具合が出たり、温泉の湯加減をチェックする必要があるのです。

Cさんは懐中電灯を手に、人気のない廊下を歩いていました。館内は静まり返り、足音が響くだけです。古い木造の廊下がきしむ音や、風が吹き込む音が不気味に聞こえました。途中、何度か寒気を感じながらも、無事に巡回を終え、最終チェックポイントである地下の倉庫に向かいました。

その倉庫は普段は使われておらず、古い備品や家具が保管されている場所です。照明も薄暗く、埃が舞う中での作業は気持ちの良いものではありませんでした。Cさんは、倉庫内の点検を終え、帰ろうとしたその時、何かが視界に入ってきました。

倉庫の奥に、古い木箱が積み重なっている一角があり、その中に「小さな扉」があるのを見つけました。今まで気づかなかったその扉は、まるで隠されるようにひっそりと存在していたのです。「こんなところに扉があったんだ…」と好奇心に駆られ、Cさんは近づいてみました。

扉は木でできており、古びていて錆びついた金具が付いていました。手を伸ばして扉を開けてみると、その先には狭い階段が下へと続いていました。階段は真っ暗で、奥がどうなっているのか全く見えません。「地下室か何かかな？」と考えつつも、Cさんは怖さよりも興味が勝り、懐中電灯を片手に階段を降りることにしました。

階段を降り切ると、そこには小さな部屋がありました。部屋には古い棚や机があり、まるで昔誰かが住んでいたかのような雰囲気が漂っていました。Cさんは周囲を見渡しながら、不思議な気持ちで部屋を探りました。

その時、彼の視線に「古びた手帳」が入りました。手帳は棚の上に置かれており、表紙には擦り切れた文字で名前らしきものが書かれていました。Cさんはそれを手に取り、中を覗いてみました。

手帳の中には、びっしりと文字が書かれており、内容は日記のようでした。しかし、読み進めるうちにその内容が次第に不気味なものへと変わっていきました。最初は普通の日常が書かれていたものの、ページをめくるごとに「誰かが来る」「追われている」といった不安定な文章が増えていったのです。

最後のページには、「逃げられない」「ここに閉じ込められた」といった恐ろしい言葉が綴られていました。Cさんはその言葉に鳥肌が立ち、手帳を落としてしまいました。直感的に「ここにいてはいけない」と感じ、急いで部屋を飛び出しました。

階段を駆け上がり、元の倉庫に戻ったCさんは、息を整えながら扉を振り返りました。扉は開けたままのはずでしたが、いつの間にか閉まっていました。背筋に寒気を感じ、Cさんはすぐにその場を離れました。

その後、Cさんは他のスタッフにこの出来事を話しましたが、誰もその扉や地下室の存在を知りませんでした。むしろ「そんな場所はないはずだ」と否定され、倉庫を確認しても、あの扉は見つからなかったのです。

一体、あの手帳に書かれていた「誰か」とは何だったのか、そして、なぜその扉が消えたのか、Cさんにはわからないままです。リゾートバイトは無事に終わりましたが、Cさんは今でもその旅館での出来事を思い出すたびに、あの不気味な地下室と手帳を忘れることができません。

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