怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

引っ越し先で見つけた古い人形 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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数年前の話だ。私は転勤で新しい街に引っ越すことになり、築30年ほどの古いアパートに住むことになった。少し古めかしいが、家賃も安く、職場へのアクセスも良かったため、決めるのに時間はかからなかった。

引っ越し当日、荷物を運び込んで一段落ついたところで、クローゼットの奥に何かがあることに気づいた。埃まみれの箱が一つ、隅に押し込まれていた。興味を惹かれ、その箱を開けてみると、中には小さな和風の人形が入っていた。

人形は、黒髪に白い着物を着た幼い女の子の姿をしていた。目はガラス玉で作られており、じっとこちらを見つめているように感じた。古びた雰囲気がありながらも、どこか不気味さを感じさせた。最初は捨てようかと思ったが、捨てるのも忍びなく、クローゼットの片隅に戻してそのままにしておいた。

その夜、妙な夢を見た。夢の中で私は見知らぬ古い家の中にいた。家は薄暗く、古い畳の上に小さな女の子が座っていた。顔ははっきりとは見えなかったが、着物姿で黒い髪が印象的だった。彼女は黙ってこちらを見つめており、何かを伝えたがっているようだった。

目を覚ましたとき、背中には冷たい汗が流れていた。夢だと自分に言い聞かせたが、妙にリアルな感覚が残っていた。

それから数日後、家の中で奇妙な現象が起こり始めた。夜中、リビングで誰かが歩くような音が聞こえたり、家具が微かに揺れるような気配を感じたりした。最初は風や家の古さのせいだと思っていたが、頻度が増してくると、さすがに不安を感じた。

ある日、寝室で眠っていると、ふと目が覚めた。何かが足元にいるような気配がして、恐る恐る目を開けると、そこにはあの人形が置いてあった。確かクローゼットの奥にしまったはずなのに、なぜここに? 震えながらも再び人形をクローゼットに戻し、ドアをしっかりと閉めた。

しかし、次の日も人形はまた寝室に移動していた。毎晩クローゼットにしまっても、翌朝には必ず別の場所に現れる。まるで人形が自分の意志で動いているかのようだった。怖くなった私は、ネットでこの人形について調べ始めたが、特に情報は見つからなかった。

どうしても不安が拭えず、ある日、友人を家に招いて相談した。彼は霊感が強いと言われている人物だったので、少しでも気が楽になるかと思ったのだ。友人が家に入るなり、表情が曇った。「この人形、ただの飾りじゃない。何かが憑いている気がする」と言われ、背筋が凍った。

友人は人形をじっと見つめた後、こう続けた。「この人形、誰かの大切なものだったんじゃないか? 多分、寂しくて誰かに話しかけたくて仕方ないんだと思う。悪意は感じないけど、ちゃんと供養した方がいいかもしれない。」

その言葉を聞き、私は決心した。翌日、最寄りの寺に行き、人形の供養をお願いした。住職は快く引き受けてくれ、「この人形には長年の思いが詰まっているようだ。しっかりと供養して、安心させてあげよう」と言ってくれた。

供養が終わった後、家の中の奇妙な現象はピタリと止まり、静かな日常が戻ってきた。あの人形は、ただ誰かに気づいてほしかっただけだったのかもしれない。捨てられることなく、大切にされることを望んでいたのだろう。

今では、あの夢に出てきた少女が微笑んでいたような気がする。もしかしたら、彼女はようやく安らかな場所に行けたのかもしれない。

怖い出来事が解決し、何か心が温まるような思い出として、私はこの経験を心に残している。あの人形は、今頃きっと安らかに眠っていることだろう。

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