怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

骨董市で手に入れた古鏡が映し出す異形の顔 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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週末、俺は何気なく立ち寄った骨董市で、妙に引き寄せられるような感覚を覚えた。普段は骨董品には興味がないが、その日はなぜか足が自然とそちらに向いていた。露店が並ぶ通りを歩いていると、ある一つの出店で古びた鏡が目に留まった。

その鏡は、重厚な木製の枠に囲まれ、時代を感じさせる装飾が施されていた。鏡面は多少くすんでいるものの、不思議と魅力的に感じた。値段は安く、特に深く考えずに購入した。店主は無愛想で、「良い買い物をしましたね」とだけ言ったが、どこかその言葉が不気味に響いた。

新居に戻り、その鏡を寝室の壁に掛けた。部屋にマッチしており、インテリアとしても悪くないと感じた。最初のうちは特に気に留めることもなく、日常を過ごしていたが、数日が経った頃から、鏡に違和感を覚え始めた。

最初に気づいたのは、髪の毛を整えるために鏡の前に立ったときだった。映る自分の顔が、微かに歪んでいるように感じた。照明の角度や鏡の古さのせいだろうと、自分に言い聞かせたが、心の中には不安が残った。

次第に、鏡に映る自分の顔が少しずつ変わり始めた。頬がこけ、目が異様に大きく見えるようになったり、口の形が違って見えたりする。疲れているせいかもしれないと無理やり納得しようとしたが、その変化は日に日に増していった。

ある晩、仕事から帰り、ふと鏡を覗き込むと、映る自分の顔がさらにおかしくなっていた。目が吊り上がり、鼻が不自然に尖り、笑っているかのように口元が歪んでいた。恐怖で息を呑んだが、実際に顔を触るといつも通りの感触だ。しかし、鏡に映る自分は、確実に「何か別の存在」に変わりつつあった。

その夜、初めて悪夢を見た。

夢の中で、俺は暗い森の中に立っていた。周囲は霧に包まれ、視界はほとんどなかったが、遠くにぼんやりと光る何かが見えた。近づいてみると、そこには骨董市で買ったあの鏡が立っていた。鏡には異形の顔が映っており、その顔がじっとこちらを見つめている。驚いて後ずさると、その顔がゆっくりと笑い、にやりと口を裂けるように広げた。その瞬間、体中に冷たい感覚が走り、全身が動かなくなった。

目が覚めたとき、汗でびっしょりだった。夢の感触があまりにもリアルで、しばらく動けなかった。だが、その悪夢はそれだけでは終わらなかった。次の日からも、毎晩あの異形の顔が夢に現れるようになった。最初は遠くから、徐々に近づいてくるその顔は、日に日に不気味さを増し、ついには耳元で囁くように声が聞こえるようになった。

「お前も、こっちへ来い。」

その声は、低く、湿っぽく、聞くだけで全身が凍りつくような響きだった。

恐ろしくなり、鏡を処分しようと決意した。だが、その鏡を取り外そうとすると、手が震えて動かない。まるで鏡が「手放すな」と命じているかのように、強い拒絶感が襲ってきた。それでも無理やり外し、ゴミ袋に入れて捨てた。

しかし、翌朝目を覚ますと、鏡は元の場所に戻っていた。袋に入れたはずの鏡が、まるで何事もなかったかのように壁に掛かっているのだ。恐怖で全身が震え、すぐに知人に助けを求めたが、誰も信じてくれず、精神的に追い詰められていった。

ある晩、決定的な出来事が起こった。

寝室でうとうとしていると、急に目が覚めた。部屋は真っ暗で、静寂が広がっていたが、妙な違和感があった。ふと鏡を見ると、そこに異形の顔が映っていた。今までの夢で見たのと同じ、醜く歪んだ顔だった。髪はぼさぼさで、目は吊り上がり、口は不気味に裂けている。

しかし、今回はそれだけではなかった。鏡の中の異形の顔がゆっくりと動き出し、こちらに手を伸ばしてきたのだ。鏡の表面を押し広げるようにして、腕がこちら側に飛び出してきた。俺は恐怖で声も出せず、ただその場に立ち尽くすしかなかった。

次の瞬間、異形の顔がじっと俺を見つめ、歪んだ口元をさらに広げ、異様な笑い声を上げた。その笑い声は、まるで頭の中に直接響くようで、耳を塞いでも消えなかった。パニックに陥った俺は、気づけば鏡を手に取り、床に叩きつけていた。

鏡は粉々に割れ、異形の顔は消えた。しかし、その破片には無数の小さな顔が映り込んでいた。それらの顔が微かに動き、最後には一斉にこちらを見上げていた。狂気に満ちた表情で、口を開けたまま。

俺はすぐにその破片を集め、ゴミとして捨てたが、すべてが終わったわけではなかった。

それからも、時折鏡を見ると、映る自分の顔が一瞬だけ歪んで見えることがある。まるで、あの異形の顔がまだこちらを見ているかのように。日常生活は取り戻せたが、鏡を見るたびに、背筋が凍るような感覚に襲われる。

あの鏡には、何か恐ろしい力が宿っていたのだろう。俺は二度と骨董市には近づかないと誓ったが、夜中にふと目が覚めたとき、背後から覗き込むような視線を感じることがある。まるで、あの異形の顔が、まだどこかで俺を待っているかのように。

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