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地下室から聞こえる赤ちゃんの泣き声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編

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念願だったマイホームを購入し、私は引っ越しを終えたばかりだった。築年数は少し古いが、広々とした庭と、静かな環境が気に入り、購入を決めた。その家には珍しいことに地下室があり、収納スペースとして活用できそうだと考えていた。しかし、引っ越し当初は片付けに追われ、地下室にはほとんど足を踏み入れることがなかった。

ある晩、仕事から帰宅してリビングでくつろいでいたとき、ふと家の中がやけに静まり返っていることに気づいた。テレビも消し、部屋の明かりも最小限にしていたせいか、微かな物音が気になり始めた。

すると、かすかな「うぅ…」という泣き声のような音が聞こえてきた。最初は風の音か何かだろうと気に留めなかったが、次第にその音が明瞭になり、確かに赤ちゃんの泣き声だと分かった。

「この家には誰もいないはずなのに…」

不安が胸をよぎりながらも、私は音の出所を探るため、家の中を歩き回った。音は断続的に続いており、どうやら階下から聞こえてくるようだ。恐る恐る耳を澄ますと、地下室への扉の向こうからその泣き声がはっきりと聞こえてきた。

「なんでこんなところから…?」

地下室には引っ越しの時に一度だけ入ったが、その時はただの広い空間で、特に異常はなかった。好奇心と恐怖が入り混じる中、私は意を決して地下室の扉を開け、階段をゆっくりと降り始めた。

階段を下るにつれ、泣き声はどんどん大きくなっていく。薄暗い地下室は埃っぽく、古い家特有のかび臭い匂いが漂っていた。ライトを点けて周囲を照らすと、無造作に置かれた段ボールや古い家具が並んでいるだけで、人の気配はない。

「誰もいないはずなのに、どうしてこんな泣き声が…」

不気味さが増し、心臓の鼓動が速くなった。その時、部屋の隅に古びたドアがあるのを見つけた。引っ越しの時には気づかなかったが、そのドアはまるで誰かが長い間隠していたかのように、目立たない位置にひっそりと佇んでいた。

泣き声はそのドアの向こうから聞こえてくる。全身に鳥肌が立ち、後戻りしたい気持ちが強くなったが、どうしても確認せずにはいられなかった。ドアノブに手をかけると、冷たい金属の感触が手に伝わり、全身に冷気が走った。

ゆっくりとドアを開けると、そこには小さな部屋が広がっていた。薄暗い部屋の中央には、古びた木製のゆりかごが置かれており、そこから赤ちゃんの泣き声が絶え間なく響いていた。

「どうしてこんなものが…」

私は恐怖に震えながらも、ゆりかごに近づいた。だが、ゆりかごの中には何も入っていない。それなのに、泣き声だけがはっきりと聞こえてくるのだ。まるで、見えない何かがそこに存在しているかのようだった。

「これは…普通じゃない…」

逃げ出そうとしたその瞬間、背後でガタンと大きな音がした。反射的に振り返ると、地下室の入口のドアが勢いよく閉じられていた。心臓が凍りつき、呼吸が苦しくなった。ドアの向こう側からは、微かな足音が聞こえてくる。誰かが階段を降りてきているのだ。

しかし、その足音は人間のものではなかった。まるで小さな子供が、ぽつぽつと不規則に歩くような音だった。次第にその音が近づいてくるのが分かり、恐怖がピークに達した。

私は意を決して地下室のドアに駆け寄り、勢いよく開け放った。しかし、そこには誰もいなかった。ただ、冷たい空気が流れ込み、泣き声も足音もピタリと止んでいた。

全身が震え、息が乱れた。私は急いで地下室を飛び出し、階段を駆け上がった。家全体が妙に静まり返り、まるで何かがこちらを見下ろしているかのような圧迫感があった。

その夜、私はどうしても家にいられず、友人の家に避難した。翌日、私は不動産屋にあの地下室について尋ねた。すると、彼は顔を曇らせ、最初は何も知らいないとのことだったが、怪しんだ私は深く追求するとこんな話をしてくれた。

「この家に住んでいた前の住人がね、子供を産んだんだけど、その子が生まれてすぐに亡くなってしまったんだ。それからしばらくして、その家族は突然姿を消してしまったんだよ。あの地下室に赤ちゃんを隠していたなんて話もあったが、真相はわからない。けれども、時々聞こえるという噂は昔からあるんだ…」

その話を聞いた瞬間、私は二度とその家には戻らないと決めた。結局、その家は引き払い、別の場所に引っ越した。しかし、今でもあの赤ちゃんの泣き声が耳に残っている。あの地下室には、未だに何かが取り憑いているのかもしれない。あの家で、あの地下室で、何が起こったのかを考えるたび、全身が冷たくなる。

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