中古パソコンに残されていた“見てはいけないフォルダ”―それを見た瞬間から始まった恐怖の連鎖」　怖い話　奇妙な話　不思議な話　短編

体験談：見てしまったが最後、後戻りできない悪夢

これは僕が中古のパソコンを購入したときに体験した、本当にあった恐怖の話です。

引っ越し先で新しい生活を始めるため、僕は近所のリサイクルショップで安い中古パソコンを探していました。特にこだわりはなく、ネットサーフィンや簡単な作業ができれば十分でした。店内を物色していると、値段が異常に安いノートパソコンが目に留まりました。見た目は少し古いものの、動作は問題なさそうでしたし、値段に惹かれて即購入しました。

家に持ち帰り、早速電源を入れてみると、問題なく起動しました。特に異常は感じず、むしろ動作が軽くて快適に使えました。しかし、気になったのは、前の持ち主が消し忘れたと思われるいくつかのフォルダがそのまま残っていたことです。僕は不要なファイルを一通り整理しようと、そのフォルダを開いてみました。

その中に、「Do_Not_Open」という名前のフォルダがありました。あまりにも典型的な「開けるな」系の名前に、逆に好奇心をそそられてしまいました。最初はスルーしようかと思ったものの、何が入っているのか気になってしまい、結局そのフォルダを開くことにしました。

フォルダを開いた瞬間、冷たい空気が部屋に流れ込んできたような錯覚に陥りました。中には無数の画像と動画ファイルが並んでおり、ファイル名はランダムな文字列や数字ばかり。普段ならこんな怪しいファイルはすぐに削除するところですが、僕は好奇心に負けて、つい最初の画像ファイルをクリックしてしまいました。

画面に映し出されたのは、古びた部屋の写真。その部屋の片隅に、ぼんやりとした白い影が立っていました。「えっ…？」と、一瞬息を飲みました。霊感があるわけではありませんが、その写真からはただならぬ不気味さが伝わってきます。続けて他の画像も確認すると、どれも薄暗い場所で撮られた写真ばかりで、ほとんどに何かしらの“人のようなもの”が写り込んでいました。写真の中には、こちらを見つめるような真っ黒な目を持つ顔がアップで映っているものもあり、その異常さに思わず目を背けてしまいました。

さらに気になり、今度は動画ファイルを再生してみました。最初に開いた動画は、無音で、手持ちカメラのようにぶれた映像が続くものでした。荒い画質の中、誰かが廃墟の中を歩いているような映像です。突然、画面の端に人影が現れたかと思うと、映像が途切れました。次に開いた動画も似たような内容でしたが、途中でカメラが急に振り返り、画面いっぱいに真っ白な顔が映り込んだ瞬間に映像がブツリと切れました。その顔は無表情で、ただこちらを見つめているだけでしたが、その瞳には底知れない何かが宿っているように感じられ、僕は思わずパソコンを閉じました。

しかし、その夜から奇妙なことが起こり始めたのです。

まず、パソコンを使っていると、勝手にファイルが開かれるようになりました。特に何もしていないのに、「Do_Not_Open」のフォルダがひとりでに開かれ、例の心霊写真や動画が次々と再生されるのです。驚いて電源を切ろうとしましたが、パソコンが勝手に再起動して、また同じフォルダが開かれる。その繰り返しでした。

さらに悪いことに、その夜から奇妙な気配を感じるようになりました。パソコンを閉じた後でも、部屋の片隅で誰かがじっとこちらを見つめているような感覚が消えません。深夜、寝ようとしても何かが気になり、ふと目を開けると、薄暗い天井の隅に黒い影が揺らめいているのです。心臓が凍りつくような恐怖に駆られましたが、次の瞬間には影は消えていました。

その後も、奇妙な現象は続きました。廊下を歩いていると背後から足音が聞こえたり、夜中に不意にパソコンが起動して例の動画が再生されたりと、日常が恐怖に染まりました。

ある晩、ついに限界を迎えた僕は、思い切ってそのフォルダごとすべてのファイルを削除しようとしました。しかし、なぜか「削除できません」というエラーメッセージが表示され、ファイルは一向に消えません。最終的には、パソコン自体を完全に初期化するしかありませんでした。初期化作業を終えると、問題はようやく収まりましたが、そのパソコンには二度と触れたくなくなり、処分することにしました。

その中古パソコンがどうしてあのような状態になっていたのか、今でも分かりません。おそらく、前の持ち主が何かしらの異常な体験をし、それを残したまま手放したのでしょう。あのフォルダに入っていたものが本物の心霊現象だったのか、あるいはただのいたずらだったのかは定かではありませんが、僕にとってはそのどちらでも恐怖に変わりはありませんでした。

中古のパソコンには、前の持ち主の痕跡が残っていることがあります。しかし、それがどのような“痕跡”であるかは、開けてみるまで分かりません。もし皆さんも中古パソコンを購入する機会があれば、あまり深く探らないほうがいいかもしれません。僕が体験したような、見てはいけないものを目にする可能性があるかもしれないからです。

ほんとうにあった怖い話「年上の彼女」

ページをめくってゾッとする　1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 (2024/7/23 13:25時点) 感想(1件)