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屋根裏部屋で得たもう一つの時間 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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田中圭介は、忙しい毎日に追われる普通の会社員でした。仕事と家庭の両立に悩む日々の中、もっと時間が欲しいといつも感じていました。そんな圭介が家族と共に引っ越してきた新しい家には、小さな屋根裏部屋がありました。古い木造の家で、屋根裏部屋は狭く天井も低いため、あまり使い道がないと思われていましたが、圭介はその場所に妙な居心地の良さを感じていました。

ある日、圭介は休日の午後を使って屋根裏部屋を片付けることにしました。古い家具やダンボールを整理しながら、ふと古びた掛け時計を見つけました。時計は止まっていましたが、圭介はそれを気に入って屋根裏部屋の壁に掛けることにしました。その後、時間を忘れて作業を続けていると、外から妻の呼ぶ声が聞こえました。「おやつでも食べない?」

時計を見ると、3時間ほど作業をしていました。しかし、下に降りて確認すると、1時間もたっていませんでした。圭介は最初、自分が時間の感覚を間違えたのだと思いました。しかし、同じようなことが何度も続いたため、彼は次第に屋根裏部屋の時間に何か異常があるのではないかと疑い始めました。

圭介は好奇心に駆られ、屋根裏部屋の時間の歪みを調べることにしました。彼は次の日、ストップウォッチを持ち込み、屋根裏部屋で1時間過ごしてみました。ストップウォッチで計測した時間が1時間を指したとき、圭介は階下に降りてリビングの時計を確認しました。驚いたことに、15分ほどしかたっていませんでした。

「屋根裏部屋では時間がゆっくり進む…?」圭介はその事実に衝撃を受けました。屋根裏部屋での1時間は、外の時間ではたったの15分程度にしか感じられないのです。圭介はこの奇妙な時間の歪みをうまく活用できないかと考え始めました。

彼はまず、屋根裏部屋を自分のプライベートスペースに改造しました。そこには仕事用の机や椅子を置き、持ち込んだ資料やパソコンをセットしました。ここで作業すれば、1日の中で誰よりも多くの時間を使えるのではないかと期待したのです。

最初のうちは、圭介は試しに屋根裏部屋での作業を行いました。仕事の書類を整理したり、読書をしたり、趣味のプログラミングに没頭したりしました。驚くことに、通常なら数時間かかる作業を、ほんのわずかな時間で終えることができました。自分では1日作業をし、夜になっている感覚でも、家族にとってはまだ昼頃の感覚で過ごせるのです。

圭介はこの「得た時間」を使って、家族との時間も充実させるようになりました。屋根裏部屋で仕事を終えた後、まだ早い時間だと感じながらリビングに降り、家族とゆっくり過ごすことができるのです。家族には、屋根裏部屋で何をしているのか不思議がられましたが、圭介は「ただの趣味の空間さ」と笑ってごまかしていました。

次第に、圭介はこの屋根裏部屋の時間を最大限に利用するようになりました。通常なら1日8時間の労働時間を、屋根裏部屋では3時間もかからず終わらせることができ、その分の時間を自由に使えるのです。彼は語学の勉強を始め、健康のためのエクササイズや、趣味の音楽制作にも取り組みました。すべてのことをやり終えても、まだ外の世界では夜になっていないのです。

この時間の歪みを利用した生活は、圭介にとって理想的でした。仕事のストレスも軽減され、体調も良くなり、家族との時間も充実していました。しかし、ある日、圭介は新しいアイデアを思いつきました。時間の歪みをもっと積極的に活用することで、自分だけでなく、家族の生活もさらに良くできるのではないかと。

彼はまず、屋根裏部屋を妻にも勧めてみました。妻には家事や育児の合間に、自分の時間をゆっくり楽しんでもらいたいと考えたのです。最初は怪訝そうだった妻も、圭介の話を聞くうちに興味を持ち、屋根裏部屋での時間を試してみることにしました。彼女もすぐにその時間のゆっくりとした流れに気づき、趣味の読書や手芸を楽しむようになりました。結果、彼女もストレスが減り、家族との時間をさらに大切にするようになりました。

次に、圭介は娘の美咲にも屋根裏部屋を紹介しました。彼女には宿題や勉強を効率的に終わらせ、その後はたっぷり遊ぶ時間を持ってもらいたかったのです。美咲もまた、屋根裏部屋での時間の感覚に驚き、楽しみながら勉強を終わらせるようになりました。

家族全員が屋根裏部屋を活用することで、田中家の日常は一層充実したものになりました。それぞれが得た時間を有効に使い、新たな趣味や学びに挑戦することで、家族全体の絆が深まったのです。

圭介はこの奇妙な屋根裏部屋の時間を、他の誰にも話さない秘密の「家族の宝物」として大切にしていました。外の世界では時間は限られていますが、屋根裏部屋のおかげで、田中家にはその時間が豊かに流れていました。そして、その時間を使って、家族は今まで以上に幸せな日々を送ることができたのです。

屋根裏部屋の時計は今も静かに時を刻んでいます。その歪んだ時間のおかげで、田中家は日々をより充実したものに変えていくことができたのです。時間の使い方を工夫することで、圭介は家族との生活を豊かにする方法を見つけたのでした。



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