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古民家で出会った生きた絵――夜に動き出す掛け軸の女性 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は、都会の喧騒から逃れ、自然に囲まれた古民家を購入することにした。築百年以上のこの家は、古いながらも趣があり、手入れさえすれば理想の隠れ家になると思った。引っ越しを済ませた後、私は家の隅々を探索し始めた。蔵の中に入ると、埃にまみれた古い掛け軸がいくつか積み重なっているのを見つけた。その中の一つに、特に目を引かれるものがあった。

その掛け軸には、古風な着物をまとった美しい女性が描かれていた。繊細な筆遣いで表現されたその女性は、まるで生きているかのような生命感を放っていた。私は一目でその絵に魅了され、リビングに飾ることにした。部屋の壁に掛けると、空間が一気に華やいだように感じた。

しかし、その夜から奇妙な出来事が始まった。最初は、床のきしむ音が気になった。古い家なので、夜に多少の音がするのは仕方ないと自分に言い聞かせていたが、音は次第に大きくなり、明らかに何かが動いているような気配を感じ始めた。私が寝室のドアを開けてリビングを覗くと、何も異常は見当たらなかった。

翌日、気のせいだと思いながらも、掛け軸を改めて観察した。女性の目は、どこか意味深な輝きを放っているように見えた。その表情には、何か訴えかけるような哀しみが漂っているようだった。日中は特に異変は感じなかったが、夜になると再び足音のような音が響き始めた。

それから数日が経ち、私の不安は頂点に達した。ある晩、寝室で寝付けずにいたとき、リビングから明らかに「歩く音」が聞こえてきた。私は恐る恐る寝室を出て、リビングへ向かった。そこで見たものは、信じがたい光景だった。掛け軸の女性が、絵の中から抜け出し、部屋の中を歩いていたのだ。

彼女の動きはゆっくりで、まるで探し物でもしているかのように、辺りを見回していた。私は驚愕し、声を出すこともできずにその場に立ち尽くした。彼女は私に気づいたのか、一瞬だけこちらを見た。その目は、生きている人間と変わらないほどに生々しかった。だが、すぐに視線を外し、再びゆっくりと部屋を歩き回り始めた。

しばらくの間、何もできずに見守っていたが、ふと彼女が掛け軸の前に立ち止まり、ゆっくりと中へ戻っていくのを目の当たりにした。まるで何事もなかったかのように、掛け軸の女性は再び絵の中に収まり、静かに佇んでいた。

私はその場で腰を抜かし、恐怖に震えた。何が起きたのか、理解できなかった。翌日、私は友人にこの出来事を話したが、当然のことながら信じてもらえなかった。しかし、自分が確かに見たことを否定することはできなかった。

その後も、夜になると掛け軸の女性が動き出すことがあった。毎晩ではないが、何かを探し求めるように部屋を歩き回り、時折こちらに視線を投げかけてくる。その度に、私は背筋が凍るような恐怖を感じながらも、なぜか彼女を追い払おうとは思わなかった。彼女の動きには、怨念や悪意のようなものは感じられなかった。ただ、何かを訴えかけているような、悲しげな気配が漂っていた。

最終的に、私は掛け軸を元の蔵に戻すことに決めた。彼女が絵の中に戻った後、掛け軸を外し、再び蔵にしまった。すると、その夜から奇妙な出来事は起こらなくなった。リビングの静けさが戻り、私は安堵した。しかし、彼女が何を求めていたのか、何を訴えたかったのかは、結局わからないままだった。

今でも時折、あの掛け軸のことを思い出す。もしかしたら、彼女には何か解決しなければならない問題があったのかもしれない。それが何であれ、私は二度とその掛け軸に手を触れることはないだろう。あの絵の中には、確かに「何か」が生きていたのだから。



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