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歪んだ現実――こっくりさんが引き寄せた恐怖 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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中学生の頃、私は友達と一緒に「こっくりさん」をやってみようという話になった。好奇心旺盛な私たちは、放課後の教室に集まってオカルト話に花を咲かせるのが日課だった。そんな中、こっくりさんの話題が出て、「一度試してみたい」と誰かが言い出したのだ。

その日、放課後に集まったのは私、クラスのムードメーカーであるリョウ、冷静で理知的なナオ、そして少し怖がりなサエコの4人だった。誰もいない教室で、私たちは机を囲み、紙と10円玉を用意した。紙には「はい」「いいえ」と五十音が書かれ、私たちは緊張しながらも10円玉に指を置いた。

「こっくりさん、こっくりさん、いらっしゃいますか?」

私たちは声を揃えて唱えた。教室は夕暮れの薄暗い光に包まれ、静まり返っていた。しばらくの間、何も起こらなかったが、突然10円玉がゆっくりと動き始めた。全員が息を呑み、10円玉の動きを見つめた。

「こっくりさん、ここにいますか?」

リョウが尋ねると、10円玉は「はい」に動いた。緊張感が高まり、私たちは次々と質問を続けた。最初は興味本位で、友達の秘密や未来のことを聞いていたが、次第に質問の内容が不気味な方向へ向かっていった。

「こっくりさん、私たちに何か悪いことが起きますか?」

誰がその質問をしたのかは覚えていない。だが、その瞬間、教室の空気が一変したのを全員が感じた。10円玉はゆっくりと「はい」に動き、教室内が冷たい沈黙に包まれた。

「もうやめよう」とサエコが怯えた声で言ったが、リョウが「せっかくだからもう少し続けよう」と言い、私たちは仕方なく同意した。10円玉は紙の上を滑り続け、不吉な言葉を綴り始めた。

「か」「げ」

「これ、やっぱりやめた方がいいって…」

サエコの顔は青ざめていたが、リョウはまだ続けようとしていた。しかし、私たち全員が限界を感じていたため、こっくりさんを終わらせることにした。

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください。」

私たちはそう唱え、10円玉が「鳥居」に戻るのを確認してから手を離した。気まずい沈黙が流れ、その後、誰も何も言わずに急いで教室を後にした。

家に帰ってからも、あの時の不吉な言葉が頭から離れなかった。何か悪いことが起きるのではないかという不安が心の中に広がり、私はその夜、なかなか眠れなかった。

翌日、学校に行くと、リョウが変わった様子で現れた。いつも明るく元気な彼が、何かに怯えているように見えたのだ。私たちが声をかけても、彼は上の空で、何かが彼を苦しめているようだった。

「どうしたの?」とナオが聞くと、リョウは小さな声で「昨夜、変なものを見たんだ」と言った。彼の話によると、家で寝ようとした時、部屋の隅に黒い影のようなものが立っていたという。その影はじっとリョウを見つめ、次第に近づいてきた。リョウが恐怖で身動きが取れなくなる中、その影は突然消えたが、その後も何度も現れたという。

「冗談だろ?」とナオが言ったが、リョウの顔は真剣だった。彼が語るその話が嘘だとは思えなかった。サエコも不安そうに「実は、私も昨夜…」と話し始めた。彼女もまた、夜中に部屋で物音が聞こえたり、何かが勝手に動いたりするのを感じたという。特に怖かったのは、電気が一瞬消え、再び点いた時に鏡に映った自分の姿が一瞬変わったことだったと言う。鏡の中のサエコは、まるで何かに取り憑かれているかのような表情をしていたのだ。

私も昨夜の夢の中で、教室で見た10円玉が不気味に動き続ける光景を見ていた。その夢があまりにもリアルで、まるで現実の一部であるかのように感じた。私たちは次第に、こっくりさんが何か良くないものを引き寄せたのではないかという考えを抱くようになった。

そして、リョウの状態は日を追うごとに悪化していった。彼は次第に学校を休むことが多くなり、登校しても誰とも話さなくなった。授業中も上の空で、どこか遠くを見つめることが増えた。友達と遊ぶこともなくなり、ただ一人でいることが多くなった。

そんなある日、リョウは突然学校に来なくなった。先生からは、彼が精神的に不安定になり、療養が必要だと言われた。その知らせを聞いた私たちは、こっくりさんをした日のことを後悔し、恐怖に襲われた。

その後、私たちは再びこっくりさんをすることはなかった。しかし、奇妙な出来事は続いた。家に帰ると、物が勝手に動いていたり、ドアが勝手に開いたり閉まったりすることが増えた。夜になると、私の部屋の中に誰かがいるような気配を感じることもあった。毎晩のように目が覚め、何度も部屋を確認したが、誰もいない。しかし、その気配は消えることなく、私を不安にさせ続けた。

ナオやサエコも同じような現象に悩まされていた。ナオは夜中に誰かが自分を見ている感覚に苦しみ、サエコは一人で家にいることが怖くてたまらないと言っていた。私たちは次第に、こっくりさんを行ったことが現実を歪めてしまったのではないかという恐怖に囚われていった。

リョウが再び学校に戻ってくることはなかった。彼の家族も転居し、その後の彼の消息を知る者はいなかった。私たちはこの体験を誰にも話せず、ただ恐怖と後悔を抱え続けた。

こっくりさんをしたことで現実が歪み、恐怖が現実となったあの日の出来事は、今でも私たちの心に深く刻まれている。あの日の軽率な行動が招いた結末を、私は決して忘れることができない。そして、二度とあのような恐ろしい体験をしたくないと心から思っている。



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