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見知らぬ街角――異界への迷い道 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その日、私はいつものように帰宅のために電車を降りた。夜も近づき、空は薄暗くなり始めていた。家までは徒歩で15分ほどの道のり。いつもの通り道を歩きながら、早く家に帰ってリラックスしたいと考えていた。

駅を出てしばらく歩くと、ふとした瞬間に普段とは違う道を選んでしまった。特に深い考えがあったわけではなく、何となく別のルートを通りたいと思っただけだった。住宅街の狭い路地に足を踏み入れた私は、普段通らない道を選ぶことに多少の冒険心を感じながら歩いていた。

道は細く、古びた家々が並んでいた。街灯の光がぼんやりと道を照らし、静かな夜の空気が漂っていた。しかし、進むにつれて周囲の雰囲気が変わっていくのを感じた。道が次第に狭くなり、建物の間隔が妙に近くなっていく。そして、いつの間にか周りの家々が古びたままの廃屋のように見えるようになった。

「おかしいな…」

私は立ち止まり、周りを見渡したが、見慣れた街並みがどこにも見当たらなかった。普段の通りなら、そろそろ大きな通りに出るはずだが、そこには見知らぬ狭い路地が続いているだけだった。不安が胸に広がり始めたが、家に帰るためには進むしかないと自分に言い聞かせた。

歩き続けると、路地がさらに曲がりくねり、まるで迷路のようになっていることに気づいた。私は何度も角を曲がり、同じような景色が繰り返される中で、次第に方向感覚を失っていった。足元のアスファルトがひび割れ、草が伸び放題になっているのを見て、ここがどこなのか全く分からなくなった。

「これって、さっきも通った場所だよな…?」

何度も同じ場所を通り過ぎているような気がして、心臓が早鐘を打つようになった。周囲には人影がなく、道はますます暗くなっていく。私は携帯電話を取り出し、地図を確認しようとしたが、電波が入らなくなっていた。画面には何も表示されず、ただ白いノイズが広がるばかりだった。

「なんで…」

私の中で焦りが増し始めた。もうどれだけ歩いているのか分からないが、家に戻れる気がしない。進むたびに道は細く、暗くなり、出口が見つからない迷路に完全に迷い込んでしまった感覚があった。

その時、ふと前方に明かりが見えた。かすかに光が漏れている古びた家の窓だ。誰かがいるかもしれない、そう思った私は、その家に近づいていった。心臓の鼓動が耳に響く中、私はドアをノックしたが、反応はなかった。

ドアはわずかに開いており、中から冷たい風が漏れ出していた。恐る恐るドアを押し開けると、中は真っ暗だったが、かすかに明かりが奥から漏れていた。私は戸惑いながらも、その光に引き寄せられるように足を踏み入れた。

「誰かいますか…?」

声をかけても返事はなく、ただ静寂が広がるだけだった。私は慎重に足を進め、明かりのもとへと近づいていった。古びた家の中は異様に寒く、空気が重たく感じられた。奥に進むと、小さな灯りがともる机が見えた。そこには、手書きの地図が広げられていた。

私はその地図を手に取り、よく見ると、そこに描かれている道が、今自分が迷い込んだ路地と酷似していることに気づいた。出口への道が描かれており、その矢印に従えば、元の場所に戻れるかもしれない。私は地図を握りしめ、すぐに家を出た。

外に出ると、再びその路地が目の前に広がっていた。しかし、地図に描かれている道に従って進むと、何度か曲がった先に、大きな通りが見えた。安心感が胸を満たし、私は駆け足でその通りへと向かった。

大通りに出ると、そこは見慣れた街並みが広がっていた。通行人が行き交い、車の音が聞こえる、いつもの帰り道だ。私はほっと息をつき、後ろを振り返ったが、そこにあったはずの路地は消えていた。見知らぬ家も、古びた街並みも、何もなかったかのように消えてしまっていた。

「何だったんだろう…」

私は不思議な感覚を覚えながらも、無事に帰れることに安堵し、家へと急いだ。帰宅後、再び地図を確認しようとポケットを探ったが、地図はどこにも見当たらなかった。まるで、最初から存在していなかったかのように。

その夜、私は不安と恐怖で眠れなかった。あの異界のような場所は、一体何だったのか。あの家で見た地図は現実だったのか、それともただの幻想だったのか。答えは分からないままだが、あの日の出来事は私の中に深く刻まれ、今でもあの街角を通るたびに胸がざわつく。



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