その日、私はいつものように仕事帰りに近所の大きな公園へ足を運んだ。自然に囲まれたこの公園は、都会の喧騒を忘れさせてくれる私のお気に入りの場所だった。広大な敷地に広がる緑と、小川のせせらぎが心を落ち着かせてくれる。私はよくその公園を散策しながら、1日の疲れを癒していた。
その日もいつものコースを歩いていた。公園の入り口から木々に囲まれた道を抜け、池の周りをぐるりと回る。ベンチに腰掛けて休憩することも忘れず、ゆったりとした時間を過ごしていた。夕方が近づくにつれ、日が少しずつ傾き、辺りは薄暗くなってきたが、それがまた公園に静かな雰囲気をもたらしていた。
いつものように散歩を楽しんでいたが、その日は何かが違った。池の周りを歩いていると、ふとした瞬間に見覚えのない小道が目に入ったのだ。その道は、木々の間からまっすぐに伸びていて、まるで誘うかのように私を引き寄せていた。
「こんな道、前からあったかな…?」
何度も通っている公園だが、その道を見たのは初めてだった。不思議に思いながらも、私は好奇心に駆られ、その道へ足を踏み入れた。
小道は徐々に細くなり、周囲の木々が次第に密集していく。葉の隙間から差し込む光はほとんどなく、空気がひんやりと冷たく感じられた。少し歩くと、周りの風景がどこか不自然に見えてきた。木々の形がいびつで、まるで道が歪んでいるような感覚に襲われた。
さらに奇妙なことに、その道には誰一人として人影がなかった。いつもなら散歩やジョギングを楽しむ人々が見られるはずの公園が、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。風も止み、ただ重苦しい静けさだけが辺りを支配していた。
「これは…おかしい…」
私は足を止め、周りを見回したが、見覚えのある景色はどこにもなかった。道はさらに細くなり、暗闇へと続いているように見えた。引き返すべきだという思いが頭をよぎったが、その時、何かが私を先へと進ませた。
小道の先には何があるのか知りたくて、私は再び歩き出した。しかし、進むほどに道はさらに異様な雰囲気を帯びていった。木々の枝が不気味に揺れ、まるで何かが私を監視しているような気配を感じた。胸の鼓動が速くなり、冷や汗が背中を伝うのを感じた。
突然、道が途切れた。目の前には、ただ黒々とした闇が広がっていた。進むことも引き返すこともできない、まるで行き止まりに追い詰められたような感覚に陥った。恐怖が一気に押し寄せ、私は後ずさりした。再び周りを見渡してみても、来た道が見えなくなっていた。気づけば、私は見知らぬ場所に迷い込んでしまっていたのだ。
パニックになりかけた私は、必死に冷静さを保とうとしたが、周囲の異様な雰囲気がそれを許してくれなかった。どこからか、低い囁き声が聞こえてきたような気がして、私は身を固くした。何者かが、私をこの道に誘い込んだのではないか、そんな考えが頭をよぎった。
「ここは、どこなんだ…?」
恐怖と混乱が入り混じる中、私は反射的に駆け出した。どこに向かっているのかも分からないまま、ただその場から逃げ出すことだけを考えていた。何度もつまずき、転びそうになりながらも、私は必死に走り続けた。
やがて、目の前に光が見えた。私は無我夢中でその光に向かって走り、ようやく開けた場所に出た。そこは、見慣れた公園の入り口だった。私は膝に手をつき、荒い息を整えながら、振り返った。
だが、そこにはもうあの見知らぬ道はなかった。いつもの公園が広がっているだけで、異様な静けさも消え去っていた。あの道は、まるで幻だったかのように消え去ってしまったのだ。
その後、私は何とか落ち着きを取り戻し、家へと帰った。あの道が何だったのか、どうして突然現れたのか、今でも答えは分からない。ただ一つ確かなのは、私は二度とあの道に足を踏み入れたくないということだ。
公園は、再び穏やかな場所に戻った。しかし、あの日の出来事は私の心に深く刻まれ、今でもその記憶が消えることはない。あの道は、現実と異界の狭間に存在する何かだったのかもしれない。
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