怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

音楽室の異変 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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小学校の頃、僕のクラスには「音楽室には近づくな」という暗黙のルールがあった。普段の授業で音楽室を使うことはほとんどなく、たまに音楽の先生が使うくらいだった。だから、僕たちはあまり気にしていなかったけれど、放課後に音楽室の近くを通ると、何か不気味な感じがすることがあった。

ある日、放課後に友達のケンタとユウタと一緒に校庭で遊んでいたんだけど、急に雨が降り始めてしまった。仕方なく、僕たちは学校の中に戻り、雨宿りがてら校舎内を探検することにした。校舎の中は薄暗く、廊下の電気もほとんど消えていた。なんとなく、僕たちは音楽室の方へ向かって歩き始めた。

「音楽室、怖いって噂あるけど、何が怖いのか知ってる?」ケンタがふざけたように言った。

「知らないけど、先生たちもあんまり使いたがらないよな」とユウタが答えた。

僕たちは音楽室の前で立ち止まった。ドアは閉まっていて、中の様子は見えなかったけど、何かが奥に潜んでいるような不気味な空気が漂っていた。

「入ってみようぜ、どうせ誰もいないだろ?」ケンタが興味津々で言った。僕は少し躊躇したけど、二人の後に続いて教室へ入った。

中に入ると、部屋は薄暗く、古いピアノや木製の机が並んでいた。窓の外は雨が強くなり、ぽつぽつと窓に当たる雨粒の音が静かに響いていた。音楽室には誰もいないはずなのに、妙に冷たい空気が漂っていた。

「何もないじゃん、やっぱりただの噂だな」とケンタが笑いながら言った瞬間だった。

突然、誰も触っていないはずのピアノの鍵盤が、カタカタと音を立てて鳴り始めた。僕たちは全員が驚いてピアノの方を見たけど、誰もそこにはいなかった。鍵盤は自動的に動いているようで、まるで何か見えない手が演奏しているかのようだった。

「や、やばいよ! 出よう!」ユウタが声を震わせて言った。

僕たちは一斉に出口に向かって駆け出したが、その時、音楽室のドアが突然バタンと閉まった。僕たちはパニックに陥り、ドアを必死に開けようとしたけど、びくともしなかった。

「開かない!」ケンタが叫んだ。

ピアノの音は次第に大きくなり、まるで何かが怒っているかのように響き渡った。僕たちはどうすることもできず、ただ恐怖に震えながらドアにしがみついていた。

その時、突然部屋の隅に置かれていた古い楽譜が宙に舞い上がり、バサバサと音を立てて僕たちの周りを飛び交い始めた。楽譜は次々と床に落ち、そこには見たこともないような不気味な音符が描かれていた。

「助けて…!」僕は必死で叫んだが、誰も助けに来る気配はなかった。

その瞬間、ピアノの音が止まり、部屋の中は静寂に包まれた。僕たちは息を呑んで、何が起こるのかをじっと待っていた。すると、突然ドアが勝手に開き、僕たちはその場から飛び出した。

廊下に出ると、外の雨の音が再び聞こえてきて、僕たちはやっと現実に戻ったような気がした。何が起こったのか分からないまま、僕たちは一目散に教室に戻り、その後すぐに家に帰った。

あの日以来、僕たちは音楽室には二度と近づかなかった。学校であの話を誰にもすることはなく、ただ胸の奥にしまい込んだままだ。音楽室に一体何が潜んでいたのか、今でも分からない。だけど、あの日感じた恐怖は今でも鮮明に覚えている。



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