都会の喧騒から離れ、田舎の古民家に移り住むことを決意した隆一。築百年以上の古民家は、歴史の重みを感じさせる独特の雰囲気を持っていた。
隆一は引っ越しの疲れを感じつつも、新しい生活への期待に胸を膨らませていた。古民家の中を探索していると、奥の部屋で古ぼけた留守番電話を見つけた。見たこともない古いモデルで、厚い埃がかぶっている。現代のデジタル機器とは異なり、テープを使用しているタイプのものだ。興味が湧き、彼はテープの再生ボタンを押した。
最初はノイズ混じりの静寂が続いたが、やがて低い音で男の声が聞こえてきた。
「こちらは、吉田です…もしもし、聞こえますか?」
その声は穏やかで、かすかに懐かしさを感じさせるものであった。続いて、別の声が流れた。今度は女性の声だった。
「お父さん、元気にしてる?私たちはみんな元気よ。またお正月に帰りますね。」
日常的なメッセージがいくつか続いたが、どれも十年以上前のものであることは明らかだった。隆一は微笑みながら聞き続けたが、次第に声が不自然に歪み始めた。
「・・・誰かが・・・見ている・・・」男の声は低く、かすれたものに変わり、異様な緊張感が漂った。
隆一は眉をひそめた。何かがおかしい。テープの録音が悪くなったのかと思ったが、次のメッセージが再生されると、その疑念は確信に変わった。
「・・・その家から、逃げろ…夜が来る前に…」
声はささやくように小さく、そして恐ろしいほど明確だった。隆一は不安を感じつつも、再生を止めることができなかった。最後のメッセージが始まった。
「…もう遅い…彼らが…来る…」
その瞬間、留守番電話が突然止まった。再生ボタンを何度押しても、機械は無反応だった。隆一は身の毛がよだつのを感じ、古民家の静寂が急に重苦しく感じられた。
彼は留守番電話のテープをそっと元に戻し、二度と再生することはなかった。しかし、その夜、古民家の周囲で微かな足音が聞こえたような気がして、隆一は眠れぬ夜を過ごすことになった。
古民家は再び静寂に包まれ、留守番電話はその不気味なメッセージと共に、今もなお埃をかぶって眠っている。隆一はその後、奇妙な現象に遭遇することはなかったが、あの声が伝えた警告が心に残り続けた。
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