山本直樹は、ある日、仕事から帰宅する途中でふと立ち寄った古本屋で、一冊の古びた電話帳を見つけた。何気なく手に取ってパラパラとめくっていると、やけに古い時代の電話番号が並んでいることに気がついた。興味を引かれた直樹は、その電話帳を購入し、家に持ち帰ることにした。
その夜、夕食を終えた直樹はリビングのソファに腰を下ろし、古本屋で買った電話帳を眺めていた。ページをめくるたびに、電話番号や人々の名前が記されており、どこか懐かしい気持ちになった。
しばらくして、ふとある名前と電話番号が目に留まった。電話番号と人々の名前の列にひとつだけ手書きのものがあった、それは「加藤」という名前で、番号も記されていた。何か引っかかるものを感じた直樹は、その番号にいたずら半分で電話をかけてみることにした。もちろん、こんな古い番号が加藤という人にまだ繋がるとは思えなかったが、なぜか好奇心が抑えられなかったのだ。
受話器を取って、その番号をダイヤルすると、電話が繋がった。しばらくの呼び出し音の後、誰かが電話に出た。
「…もしもし?」
受話器からは、静かな女性の声が聞こえてきた。直樹は驚いて言葉を詰まらせたが、何とか「加藤さんですか?」と尋ねた。
「はい、加藤です。どちら様ですか?」
その声は穏やかで、どこか懐かしい感じがした。だが、直樹には心当たりのある人物ではなかった。しばらくの沈黙の後、直樹はとっさに「失礼ですが、今何時ですか?」と尋ねてしまった。女性は少し考えた後、「今は…午後8時ちょうどです」と答えた。
直樹は時計を見ると、確かに午後8時ちょうどだった。彼は何か奇妙な一致を感じながらも、「失礼しました、間違い電話です」とだけ言い残し、電話を切った。
その後、直樹はこの出来事を忘れようとしたが、何かが引っかかっていた。翌日、再びその番号に電話をかけてみたが、今度は繋がらなかった。「番号が存在しない」という自動音声が流れただけだった。
不思議に思った直樹は、その番号について調べてみることにした。電話会社やインターネットで調査を進めると、なんとその電話番号は数十年前に使われていたものであり、今はもう使われていないことが判明した。そして、驚くべきことに、その番号に登録されていた加藤さんという家族は、数十年前に不幸な事故で亡くなっていたことがわかった。
さらに調べを進めると、その事故はちょうど午後8時に起きたことが判明した。直樹は鳥肌が立つのを感じ、あの日の出来事がただの偶然ではないことを確信した。
その後、直樹は古い電話帳をそっと引き出しにしまった。彼は二度とその番号に電話をかけることはなかったが、あの不思議な体験は心に残り続けた。
電話は今もなお、人と人を繋ぐ手段であるが、時にそれは、過去や思い出といったものとも繋がっているのかもしれない。直樹はそう思いながら、いつしか古い電話帳のことを思い出すことが少なくなったが、その記憶は彼の心の片隅で、静かに生き続けていた。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40%ポイント還元中
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |