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深夜に鳴る無言の電話、学校で起きた恐怖の出来事 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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佐藤先生は、その日も夜遅くまで残業をしていた。学期末が近づくと、どうしても仕事が溜まりがちで、誰もいない静かな学校の職員室で一人、黙々と作業を続けていた。時計の針が夜の10時を指すころ、疲れからか、少し目が重くなり始めていた。

その時、突然電話が鳴った。静まり返った職員室に響く電話の音は、いつも以上に大きく聞こえた。こんな時間に一体誰だろう?不審に思いながらも、佐藤先生は受話器を取った。

「もしもし、佐藤です」

しかし、相手からの応答はなかった。無音の中、ただ微かに息遣いが聞こえるだけだった。佐藤先生は少し戸惑ったが、再び声をかけた。

「もしもし、どちら様ですか?」

返事はない。相手はただ、受話器の向こうで静かに呼吸をしているだけだった。佐藤先生は一瞬、いたずら電話だろうかと思ったが、何かが違うと感じた。相手の呼吸はどこか不気味で、冷たい空気が漂っているように思えた。

「…切りますよ?」

そう言って、佐藤先生は受話器をそっと置いた。しかし、心の奥に得体の知れない不安が芽生えた。なぜか、その無言の相手の存在が頭から離れず、胸騒ぎが収まらなかった。

翌日から、佐藤先生は学校内でいくつかの奇妙な出来事に気づき始めた。廊下を歩いていると、誰もいないはずの教室から物音が聞こえてきたり、職員室の備品がいつの間にか移動していたりする。最初は疲れのせいだと思っていたが、その頻度が次第に増していき、次第に現実感を伴ってきた。

ある日、放課後の見回りを終えた佐藤先生は、廊下の先に誰かの姿を見かけた。白い影がスッと曲がり角に消えていったのだ。慌てて後を追うが、角を曲がるとそこには誰もいない。廊下は暗く、ただ静寂だけが支配していた。

「おかしいな…」佐藤先生は呟いたが、背中には冷たい汗が流れていた。職員室に戻る途中、ふと昨日の無言電話を思い出し、胸がざわついた。まさか、あの電話と関係があるのだろうか?

その夜も、佐藤先生は残業をしていた。ふと気づくと、再びあの電話が鳴り響いた。時計を見ると、ちょうどこないだと同じ時間の夜10時だった。嫌な予感がしたが、佐藤先生は覚悟を決めて受話器を取った。

「もしもし、佐藤です…」

しかし、またしても無言のまま、相手は静かに呼吸をしているだけだった。佐藤先生は何かを言おうとしたが、言葉が喉に詰まって出てこなかった。その時、背後で何かが動く気配を感じた。

恐る恐る振り返ると、そこには誰もいない。しかし、確かに何かがあったはずだ。再び受話器に耳を近づけると、相手の呼吸が一段と重く、そして近く感じられた。まるで、すぐ背後に立っているかのように…。

佐藤先生は恐怖で身動きが取れなくなった。その瞬間、受話器の向こうから、かすかに聞こえた。

「…見つけた…」

それは低く、ささやくような声だった。佐藤先生は慌てて受話器を置き、電話線を引き抜いた。しかし、その声は頭の中で鳴り続け、恐怖が彼を包み込んだ。

翌日、佐藤先生は体調を理由に休暇を取った。だが、学校に戻ったときには、あの無言の電話はすっかり止んでいた。ただ、職員室の電話機に近づくたびに、あの不気味な呼吸の音が頭の中で響き続けた。

佐藤先生はその後も時折、電話機の方に目をやるたびに冷たい恐怖を感じるようになった。無言の電話が何を意味していたのか、あの声の主が誰だったのか、彼には知る術がなかった。ただ一つ確かなのは、あの夜の出来事が、佐藤先生の心に消えない傷を残したことだった。



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