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深夜のエレベーター――止まるはずのない地下4階 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その日は終電間際まで仕事が長引き、私はビルを出るために地下駐車場に降りようとしていました。ビルの地下は地下1階と地下2階があり、どちらも駐車場になっていました。私は普段、地下2階に車を停めています。いつもなら早く帰るのですが、その日は深夜まで残業が続き、ようやく仕事が終わった時にはビルには私一人しか残っていませんでした。

エレベーターに乗り込み、「B2」のボタンを押して待っていました。ビル内は静まり返っていて、エレベーターの動く音だけが響いていました。エレベーターはゆっくりと下降し、すぐに地下2階に到着するはずでした。

しかし、突然エレベーターが停止し、「B4」のボタンが光りました。

「え?地下4階なんてあったかな…」

一瞬、何が起こっているのか理解できず、私は困惑しました。地下4階は存在しないはずです。エレベーターのパネルにもそんなボタンはなかったのに、突然「B4」と表示され、エレベーターが止まったのです。

恐る恐るドアが開くと、そこには想像もしなかった光景が広がっていました。薄暗い照明に照らされた廊下が続いていて、どこまでも真っ直ぐに伸びているように見えました。壁はコンクリート打ちっぱなしで、ひび割れや水滴の跡が見えます。まるで何十年も放置されていたかのような、荒れた空間でした。

「ここは…一体どこなんだ?」

私は思わず声に出していました。エレベーターの中に戻りたいと思いましたが、何かに引き寄せられるように、廊下に一歩足を踏み出してしまいました。足音が妙に響き、背筋が寒くなりました。

廊下を進むうちに、奥からかすかな物音が聞こえてきました。何かが壁を引っ掻くような音、そして遠くで何かがかすかに話しているような声。私は足を止め、耳を澄ませました。

「…誰か…いるのか?」

声が震え、心臓が鼓動を速めます。しかし、誰も答えませんでした。ただ、かすかな音が遠くから聞こえてくるだけです。

私は恐怖に駆られ、引き返そうとしましたが、振り返った時、エレベーターのドアがゆっくりと閉まり始めました。慌てて駆け寄りましたが、ドアは私の目の前で完全に閉じ、エレベーターは無音のまま動かなくなりました。

「ここに閉じ込められたのか…?」

私は必死にドアを叩きましたが、エレベーターは一向に反応しません。パニックに陥りそうになるのを必死で抑え、私は再び廊下の奥を見つめました。奥には、何かが動いている影が見えました。人のような形をしていましたが、その動きは不自然で、まるで何かを探しているかのように壁を這い回っていました。

「…出さなきゃ…」

その瞬間、頭の中に奇妙な声が響きました。耳で聞こえたわけではなく、まるで誰かが直接脳に囁きかけてくるような感覚でした。その声は「出してくれ…ここから…」と繰り返し、私の心に不安と恐怖を植え付けました。

「何なんだ、ここは…!」

もう一度ドアを叩きましたが、無駄でした。影が徐々にこちらに近づいてくるのが見え、私は背中に冷たい汗を感じました。足が震え、動けなくなりそうでしたが、最後の力を振り絞ってエレベーターのドアを再び叩きました。

その瞬間、突然ドアが開きました。エレベーターの中には何も変わらず、ただ静かに私を待っているかのようでした。私は迷わず飛び乗り、無意識のうちに「1階」のボタンを押していました。

エレベーターは再び動き出し、今度はスムーズに上昇を始めました。地下4階の表示は消え、私は心の中で安堵しました。

やがてエレベーターは1階に到着し、ドアが開きました。見慣れたロビーが広がっていましたが、私はしばらくの間、その場から動けませんでした。背後から、再びあの声が聞こえるのではないかという恐怖が、私を立ちすくませたのです。

それ以来、私はあのエレベーターに乗るのを避けるようになりました。あの「地下4階」は実際に存在したのか、それとも私の頭の中で作り出された幻覚だったのか、今でも分かりません。しかし、あの声と影が現実のものだったことだけは、確信しています。

そして何よりも、あのエレベーターが私をあの場所に引き込もうとしたのかもしれないという考えが、今でも私の心に深い恐怖を刻んでいます。



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