あれは、数年前のことでした。都心にある高層ビルで働いていた頃、私は恐ろしい体験をしました。それは今でも忘れられない、まるで悪夢のような出来事でした。
その日、仕事が長引き、ビルを出る頃にはすでに夜の9時を過ぎていました。オフィスビルは人影もまばらで、帰り支度をしている同僚に「お先に」と声をかけてから、エレベーターに向かいました。疲れ切った体を引きずるようにして、私はエレベーターに乗り込みました。
乗り込んだエレベーターには、他に誰もいませんでした。私一人だけの空間。いつも通り1階のボタンを押し、エレベーターは静かに動き始めました。階数表示がひとつずつ下がっていくのをぼんやりと見ていると、突然、エレベーターがガタガタと揺れて停止しました。
「え?なんで?」
一瞬、何が起こったのか理解できず、私は呆然としました。エレベーターの照明がちらつき、次の瞬間、完全に消えてしまいました。暗闇が私を包み込み、エレベーター内は静寂に支配されました。
「故障か…?」
私は急いで非常用インターホンのボタンを押しましたが、何の反応もありませんでした。携帯電話を取り出しましたが、圏外の表示が出ていて、どこにも連絡が取れませんでした。嫌な汗が額に浮かび、恐怖がじわじわと体を包んでいきました。
その時、突然、エレベーターのスピーカーから微かなノイズが聞こえました。私はスピーカーに耳を傾けましたが、ノイズは次第に大きくなり、かすかな囁き声に変わっていきました。
「…出られない…」
誰かの声が聞こえた気がしました。背筋が凍りつき、思わず後ずさりしました。エレベーターの中には誰もいないはずなのに、その声は確かに私の耳元で囁かれたように感じました。
「誰かいるのか…?」私は震える声で問いかけましたが、返事はありませんでした。ただ、その不気味な囁き声が再び聞こえてきました。
「ここからは…出られない…」
恐怖で頭が真っ白になりました。声は繰り返され、エレベーターの中がどんどん狭く感じられるようになりました。私は必死に冷静になろうとしましたが、その声が私の神経をどんどん蝕んでいきました。
次の瞬間、エレベーターの天井にある非常口がガタッと音を立てました。私は思わず上を見上げましたが、非常口がゆっくりと開き始めているのが見えました。
「何かが…いる…」
私は背中に冷たい汗が流れるのを感じました。何かが天井の向こうから私を見ているような、そんな感覚がありました。目を凝らして見ましたが、暗闇の向こうには何も見えません。しかし、その恐怖は確実に存在していました。
その時、突然エレベーターがガタガタと揺れ始めました。私はバランスを崩し、倒れそうになりましたが、エレベーターは突然動き出し、急降下を始めました。恐怖とパニックで息が詰まり、ただじっとしていることしかできませんでした。
エレベーターは一気に下降し、やがて衝撃と共に止まりました。私は倒れ込むようにして床に崩れ落ち、しばらく動けませんでした。ドアが開いた時、私は這うようにして外に出ました。そこは見慣れた1階のロビーでしたが、私には全く違う場所のように感じられました。
体中が震え、冷や汗が止まりませんでした。振り返ると、エレベーターは静かに閉まり、何事もなかったかのように静まり返っていました。しかし、あの時聞こえた囁き声と、天井の非常口が開いた瞬間の恐怖は、今でも私を追いかけています。
その後、私は同僚にあの出来事を話しましたが、誰も信じてくれませんでした。ただの疲れによる幻覚だと言われましたが、私はそうは思えませんでした。あのエレベーターには、何か得体の知れない存在が確かにいたのです。
それ以来、私は一人でエレベーターに乗るのが怖くなり、特に夜遅くにエレベーターに閉じ込められることを恐れるようになりました。あの時の恐怖が、今でも私の心に深く刻み込まれているのです。
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