私が学校の用務員として働き始めてから、かれこれ20年ほどになります。毎日、生徒たちが帰った後の校内を掃除し、備品の管理や修理を行うのが私の仕事です。普段は何も特別なことはありませんが、時折、夜遅くまで作業をすることがあります。その時間帯には生徒や教師がいないため、学校はひっそりと静まり返り、足音すら反響するほどです。
しかし、その夜はいつもとは違う、何かが異なる感覚がありました。
その日は、体育館の倉庫にある道具の整理を頼まれていて、残業していました。整理を終えて職員室に戻り、最後の片付けをしていた時です。時刻はもう夜の9時を回っていて、校舎内には誰もいないはずでした。外は真っ暗で、窓の外に見えるのはわずかな街灯の光だけです。
職員室の片付けを終え、帰ろうと電気を消し、廊下に出ました。廊下は静まり返り、夜の冷たい空気が漂っていました。私はいつも通り、施錠をしながら一階へ向かって歩いていました。
ところが、その時、上の階から「コツ…コツ…」と足音が聞こえてきたのです。
「こんな時間に誰かいるのか?」
私は不思議に思いました。すでに全ての教室を閉めたはずですし、生徒や教師が残っているという話も聞いていませんでした。念のため確認しようと思い、足音が聞こえた二階に上がっていきました。
二階に着くと、廊下は薄暗く、人気はまったく感じられません。足音はピタリと止んでいました。
「誰かいますか?」
私は声をかけましたが、返事はありませんでした。ひとつひとつの教室のドアを確認しましたが、すべて施錠されており、誰もいない。気のせいだったのかと思い、そのまま帰ろうとした時――再び、「コツ…コツ…」と足音が響きました。
今度は明らかに、私のすぐ背後から聞こえました。
「え…?」
振り返りましたが、そこには誰もいません。廊下は相変わらず静まり返り、薄暗いだけです。それでも足音ははっきりと、私の耳に残っています。
「何かがおかしい…」
急に背筋がゾッとし、冷たい汗が流れました。私は恐怖に駆られ、足早にその場を離れようとしましたが、今度は階段の上から再び「コツ…コツ…」という足音が聞こえ始めました。しかも、それは私に向かってゆっくりと近づいてくるようなリズムで響いていました。
「これは、まずい…」
本能的にそう思いました。無意識に走り出し、一階へ降りようとしましたが、その足音は私のすぐ後ろから迫ってくる。振り返る勇気もなく、ただひたすらに階段を駆け下りました。心臓の鼓動が早くなり、足音はますます近づいてきます。
ようやく一階にたどり着き、職員室の前で息を整えようと立ち止まったその瞬間――ピタリと足音が止みました。背後には、再び静寂が訪れました。
恐る恐る振り返ると、そこには誰もいません。廊下は静まり返り、暗がりの中にぼんやりとした光が揺れているだけでした。
「一体、何だったんだ…?」
私は急いで鍵をかけ、職員室の扉を閉めて外へ出ました。学校の外に出ると、冷たい夜風が顔に当たり、ようやく現実に戻った気がしました。
あの足音が誰のものだったのか、あるいは何かの幻聴だったのかは分かりませんが、あの日の出来事は今でも忘れられません。
学校という場所は、昼間は賑やかで楽しい場所ですが、夜になると全く違う顔を見せるものです。静まり返った校舎の中には、私たちの知らない何かが潜んでいるのかもしれません――そう思うと、今でも背筋が寒くなります。
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