ある夜、仕事で疲れ果てていた私は、いつもより早めにベッドに入りました。特に何か心配事があったわけではなく、ただ普通に眠りについただけでした。しかし、その夜は不思議な夢を見たのです。
夢の中で、私はどこか知らない場所にいました。それは、小さな田舎町のような場所で、懐かしさを感じる静かな空気が漂っていました。古びた木造の家々が並び、町には誰もいません。道は砂利で覆われていて、踏むたびにサクサクと音を立てました。
私は何となくその道を歩き続けました。どこへ向かうのか分からないまま、ただ足が自然に前へ進んでいく感じです。町全体が夕暮れに包まれていて、空がほんのり赤く染まっていました。
やがて、目の前に小さな家が見えてきました。特に特徴のない、普通の家でしたが、なぜかその家の前で足が止まりました。その家の玄関は空いており、靴が一足だけ揃えて置かれていましたが、それ以外に人の気配はありません。
ふと、背後から声が聞こえました。
「いらっしゃい。」
振り返ると、そこには見知らぬ年配の女性が立っていました。彼女は穏やかな表情で微笑みながら、私をじっと見つめていました。特に恐ろしい感じはなく、どこか安心感さえ覚えるような優しさを持った人物でした。
「ここで何をしているの?」と私が尋ねると、彼女は少し考えるようにしながら答えました。
「待っていたのよ。あなたが来るのを。」
私は何か心に引っかかるものを感じましたが、具体的に何を言いたいのかは分かりませんでした。ただ、彼女の言葉に強く惹かれるものがありました。
「どうして私が来るのを待っていたんですか?」と聞きましたが、彼女は微笑んだまま何も言いませんでした。ただ、優しく玄関の方を指差しました。
「どうぞ、入って。」
なぜか彼女の言葉に逆らえないような気持ちになり、私はその家に入ろうとしました。しかし、ちょうどその時、夢が終わったのです。
ふっと目が覚めると、私は自分のベッドにいました。部屋はいつもと変わらず、深夜の静けさに包まれていました。夢だったんだ、と思いながらも、あの女性の顔と声が妙に鮮明に心に残っていました。
「変な夢だったな…」
私はそう思いながらベッドから出ました。起き上がると、足元に何かが付いていることに気づきました。見ると、そこには砂が少しだけ散らばっていました。まるで、外を歩いた後のように、細かい砂粒が足元に落ちていたのです。
「え…?」
驚いて足の裏を確認すると、そこにも砂がついていました。夢の中で歩いていた砂利道の感覚がリアルに蘇り、私は一瞬、夢と現実が混ざり合ったような感覚に襲われました。
「ただの夢だよな…?」
私はそう自分に言い聞かせながら、足についている砂を拭い、床を掃除しました。でも、その砂がどこから来たのか分かりませんでした。部屋の中には砂なんてあるはずがないし、寝ている間に外へ出たわけでもない。現実の世界では説明がつかないものでした。
それ以来、あの夢のことがずっと頭の中に引っかかっています。あの年配の女性は一体誰だったのか、そしてどうして私を待っていたのか。あの家に入っていたら何が起こったのか――今でもその答えは分かりません。
あの日、足に付いた砂が現実だったのか、それとも単なる偶然だったのか。その真実を確かめる術はありませんが、今でもふとした瞬間にあの夢の風景と優しい女性の微笑みが蘇ってきます。夢と現実が交差したような、少し不思議で奇妙な体験でした。
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