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静かに動く机――用務員が語るささいな不思議 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は、長年学校の用務員として働いています。毎日、校舎内を掃除したり、設備の点検をしたりしていると、小さな変化にもすぐに気づくようになります。普段は大したことが起こるわけではないんですが、ある時、ささいな不思議な体験をしました。

それは、ある教室のことでした。放課後、生徒たちが帰った後に、いつも通りその教室を掃除していたんです。机と椅子をきちんと整えて、床をモップがけしてから、最後に黒板をきれいにして、その日は終わりにしました。

翌朝、出勤してみると、教室の中が少しおかしいことに気づきました。

「ん…?何か変だな…」

よく見てみると、前日の掃除の時にきちんと並べたはずの机が、わずかに動いているんです。ほんの少し、机の位置がずれているだけ。たった数センチの違いでしたが、毎日掃除している私にはすぐにわかりました。

「気のせいか?」

そう思いながらも、その日の掃除の時に、机を再び整えました。何度も確認しながら、机の位置を正確に揃え、全てきちんと並べてから教室を後にしました。

しかし、次の日――また同じことが起こっていたんです。

机が、微妙にずれている。

ほんの数センチ動いているだけで、生徒たちが気づくようなものではありません。でも、私には明らかでした。私はその時、教室で何が起こっているのか分からず、誰かがイタズラでもしているんだろうと思っていました。

そこで、ある晩、私は確認のために少し遅くまで残って、教室の様子を見張ることにしました。生徒も教師も誰もいない時間、静まり返った校舎に一人で残り、机の動きをじっと見守っていました。

数時間が過ぎ、特に変わったことは起きません。何も動かないし、静かなままです。眠気が襲ってきて、そろそろ帰ろうかと思った時、ふと何かが動いた気がしました。

「ん…?」

よく見ると、教室の真ん中にある一つの机が、ほんのわずかに前に動いたんです。最初は目の錯覚かと思いましたが、確かに動いていました。ほんの数センチ。音も立てず、静かに、ゆっくりと。

「まさか…机が勝手に…?」

信じられない光景でしたが、それ以上大きな動きはなく、その机は静止しました。机が動いたのは本当に一瞬で、その後はまるで何事もなかったかのように教室は静まり返りました。

次の日も、また同じ机が少しだけ動いていました。もしかすると、校舎が古くて、少し傾いているのかもしれません。あるいは、微妙な風か何かが影響しているのか――そう思うことにして、私は特に深く追求しませんでした。

でも、あの動き方は、今思い出しても妙に人間的で、ただの物理的な現象ではないような気がします。音もなく、誰にも気づかれないように、ほんの少しだけ机が動く。

それ以来、その机だけは、毎朝ほんの少し位置がずれていることに気づくようになりました。でも、そのずれはいつも決まってわずか数センチだけ。生徒や教師にとっては気づかない程度で、大きな問題にはなりません。

あれが何だったのかはわかりませんが、ささいな不思議として、今でもその机を見るたびに思い出します。

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