忘れられた心霊写真に宿る優しさ　怖い話　奇妙な話　不思議な話　短編集

私は大学時代から写真を趣味にしていて、風景や友人たちの笑顔を撮影するのが大好きでした。しかし、ある出来事がきっかけで、私は一時期カメラを持つのが怖くなったことがあります。それは、心霊写真にまつわる奇妙な体験から始まりました。

数年前、友人の結婚式に招かれた時のことです。式は古い洋館で行われ、雰囲気のあるレトロな会場に、私は夢中で写真を撮っていました。美しいドレスに包まれた新婦、笑顔の新郎、招かれた友人たち。何気ない瞬間を切り取ろうと、シャッターを切るたびに心が躍りました。

その日の夜、帰宅後に撮影した写真を確認していると、ある1枚に異変を感じました。それは、結婚式のメインイベントである誓いのシーンを撮った写真でした。新郎新婦が誓いを交わすその瞬間、ふと気づくと、彼らの後ろにぼんやりとした人影が映り込んでいたのです。

最初は光の加減か何かだろうと思って、あまり気にしませんでした。しかし、ズームしてよく見ると、その影ははっきりと人の姿をしていて、髪の長い女性がぼんやりと微笑んでいるように見えました。招待客の中にそんな女性はいなかったはずですし、その場所は誰も立っていないはずの位置でした。

恐怖がじわじわと私を包み込み、心霊写真を撮ってしまったのではないかと思い、手が震えました。誰かに話そうとも思いましたが、せっかくの結婚式の写真でこんな不気味なことを話すわけにはいかないと思い、その写真はひとまず保存しておき、結婚式の思い出を台無しにしないように他の写真を送りました。

しかし、写真を見てしまってから、奇妙なことが起こり始めました。その夜、夢にあの写真に映った女性が現れたのです。夢の中で、彼女は静かにこちらを見つめ、何かを言いたげな表情をしていました。彼女が何かを伝えようとする度に、目が覚めてしまい、その内容を思い出せないままでした。

数日間、同じ夢が続きました。私は疲れ果て、ついに我慢できなくなり、あの写真を削除することを決めました。しかし、いざ写真を削除しようとすると、どうしても削除ボタンが押せないのです。まるで何かが手を止めているかのような感覚でした。

その時、ふと気づきました。あの女性の表情には、どこか「懐かしさ」や「悲しみ」が含まれていたように思えたのです。彼女はただ私を怖がらせるために現れたのではなく、何かを伝えようとしていたのかもしれない――そう感じました。

そこで、もう一度写真をじっくりと見直すことにしました。すると、新郎の隣に立っている新婦の顔に注目しました。新婦は、幸せそうに微笑んでいましたが、その表情と、写真に映り込んでいる女性の顔にどこか似ていることに気づいたのです。

その瞬間、すべてが繋がりました。私は思い切って新婦にその写真のことを話すことにしました。心霊写真であることを伝えるのはためらわれましたが、真実を話す必要があると感じたからです。新婦は最初驚いていましたが、写真を見た瞬間、涙を浮かべました。

「この人、私の亡くなったおばあちゃんだと思う…」と彼女はつぶやきました。聞けば、新婦のおばあさんは彼女の幼い頃に亡くなったそうで、結婚式にはもちろん来られるはずもありませんでした。しかし、新婦は幼少期からとてもおばあさんに可愛がられていたため、自分の結婚式にはおばあさんも見守っていてほしいと密かに願っていたそうです。
怖い心霊写真だと思っていたその一枚は、実は優しい家族の絆が写り込んだ奇跡の写真でした。

私はその場で、新婦にその写真を手渡しました。「きっと、おばあさんが見守ってくれているんだよ」と伝えると、新婦は涙を拭きながら微笑みました。

「ありがとう。この写真、大切にするよ。おばあちゃんが私の結婚式に来てくれたんだね」と彼女は感謝の言葉をくれました。

私にとって、あの写真はただの恐怖から始まったものでしたが、結果的には家族の愛情が込められた、心温まる一枚となりました。写真は時に、目に見えないものを映し出すことがあるのだと、この経験を通じて強く感じました。

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