私は普段、写真撮影が趣味で、友人たちの記念日や風景など、気に入った瞬間を収めることが好きでした。ある時、友人たちと山へ旅行に行くことになり、自然の美しい景色を撮ろうと、私はいつもより気合を入れてカメラを持っていきました。その旅行は、楽しさと笑いに満ちたもので、私たちはたくさんの思い出を作りました。
その中で、特に印象的だったのが、山頂近くにある古い神社でした。小さな木製の社が、風雨に耐えて佇んでいる様子が風情があって、私はその場所で友人たちを撮影することにしました。数枚撮った後、自分も一緒に写真に入ろうと思い、三脚にカメラをセットし、タイマーでシャッターを切りました。みんなで肩を組み、笑顔で写真に納まったその瞬間、風が強く吹いて、落ち葉が舞い上がったことをよく覚えています。
旅行から帰った後、撮った写真をパソコンで確認していると、ふとあることに気が付きました。神社で撮ったグループ写真に、見覚えのない人物が写り込んでいたのです。私たち5人が並んでいる写真に、全員が知らない老人が一緒に笑顔で映っているのです。風に揺れる木の下で、彼は私たちと同じように肩を並べて、柔らかい笑顔を浮かべていました。
「こんな人、周りにいた?」と、私はすぐに友人たちにその写真を見せましたが、誰も心当たりがありませんでした。私たち以外、あの場所には誰もいなかったはずです。それに、その老人はどこか昔の時代の服装をしており、今の時代の格好とは思えないものでした。
「これって、いわゆる心霊写真じゃない?」と誰かが言い、全員が一瞬凍りつきました。気味悪さを感じつつも、その老人の穏やかな笑顔には不思議な温かさがあり、私たちは怖さよりも、むしろ親しみのような感覚を覚えました。
その夜、私は妙な夢を見ました。夢の中で、私は再びあの神社に立っていて、木々の間を歩いていました。そこに、あの写真に写っていた老人が現れました。彼は穏やかに微笑みながら、私に「ありがとう」と静かに言いました。その後、老人は姿を消し、私は目が覚めました。
目が覚めてすぐに、私は思わずスマホで神社について調べてみることにしました。すると、その神社は地元で長年守られてきた場所であり、特に地元の人々からは「山の守り神」として敬われている場所だということが分かりました。さらに驚いたことに、何十年も前にその神社を支えていた老神主が、今は亡くなっているものの、多くの人々に親しまれていたという話を見つけました。
私はその時、夢に出てきた老人がその神主だったのではないかと考えました。彼は山を守り続け、その場で訪れる人々を見守り続けていたのかもしれません。そして、私たちが撮った写真にふと姿を現し、共に笑顔で写り込んだのではないかと。
不思議なことに、その後しばらくしてから、私のカメラに保存されていたあの写真をもう一度確認した時、老人の姿は消えていました。彼が写っていた場所には、ただの木々と風景が映っているだけで、老人の笑顔は跡形もなく消えていたのです。
しかし、私たちの記憶の中には、あの老人の穏やかな笑顔が今でも残っています。恐怖や不安を感じることなく、むしろ心が温かくなるような、不思議で少し優しい出来事でした。もしかすると、彼は私たちに一瞬でも山の平穏を感じてほしかったのかもしれません。
写真は残らなくても、私たちが体験したあの瞬間は、きっと忘れられない大切な思い出として心に刻まれています。
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