私はカメラマンとしてフリーで活動している。普段はポートレートや風景写真を撮ることが多いが、最近は依頼を受けて結婚式やイベントの撮影にも足を運ぶようになっていた。ある日、定期的に訪れる中古カメラ店で、不意に目に留まった古いフィルムカメラがあった。レンズが美しく光を反射していて、使われた形跡がほとんどなかったため、珍しい逸品だと感じて即座に購入した。
そのカメラを最初に使ったのは、とある小さなウェディングだった。新郎新婦の幸せな瞬間を収めながら、ふとそのカメラで1枚撮ってみようと思い、何気なくシャッターを切った。その場では何も特別なことは起こらず、結婚式も問題なく終わった。現像するのを楽しみにしながら、翌日、写真を現像所に持ち込んだ。
数日後、現像された写真を受け取ると、予想もしなかった奇妙なものが写っていた。新郎新婦の笑顔の写真には、彼らの背後にぼんやりとした人影が映り込んでいたのだ。最初はただの光の反射や影かと思ったが、よく見ると、その影は不自然な場所に浮かんでいるように見えた。まるで、空中に立っているかのような位置で、ぼんやりとこちらを見つめていた。
少し不気味に思いながらも、光の加減やフィルムの劣化だろうと自分に言い聞かせ、撮影を続けることにした。その後、次の撮影現場でも同じカメラを使ってみたが、また同じように何かが映り込んだ。今回は公園で家族写真を撮っていたが、背後の木々の間に、同じように人影が映っていた。顔はぼんやりとしていて判別できないが、間違いなく誰かがこちらを見つめている。
気味が悪くなり、しばらくそのカメラを使うのを避けた。しかし、ある日、ふとした好奇心からまたシャッターを切ってしまった。何度か同じ場所でテスト撮影をしたが、やはり例の人影がどこかしらに映り込んでいるのだ。背後の壁に、木陰に、まるで意図的にこちらを覗いているかのような位置に。それも、撮影する度に少しずつ、その人影が近づいてきているように見えた。
次第に、私の生活に異変が起こり始めた。夜、部屋で写真の編集をしていると、背後に誰かの気配を感じるようになったのだ。振り返っても当然誰もいない。しかし、その気配は日に日に強くなり、まるで誰かが私の背後でずっと見ているかのような感覚が消えなくなった。
一番恐ろしかったのは、ある夜のことだった。私は寝室にいて、ベッドに入って眠ろうとしていた。突然、部屋の隅にあるカメラバッグから何かがカサリと音を立てた。最初はネズミか何かが入り込んだのかと思ったが、バッグを確認すると何もない。しかし、カメラのレンズが私を見つめているかのように感じたのだ。その時、異常な寒気が背筋を走り、全身が凍りつくような恐怖に襲われた。
翌朝、私は決心してそのカメラを処分することにした。ゴミ袋に入れ、できるだけ遠くの廃棄所に捨てるつもりだった。しかし、その夜、夢の中で私はそのカメラを再び手にしていた。夢の中の私は、なぜか強迫観念に駆られ、何度も何度もシャッターを切っていた。そして、撮影する度に、あの人影が少しずつはっきりと見えるようになっていく。
最後の1枚を撮影した瞬間、私は夢の中でその人影と目が合った。ぼんやりとしていた顔がはっきりと見え、無表情のままこちらに手を伸ばしてきた。そこで目が覚めたが、心臓は激しく鼓動しており、汗で体がびっしょりになっていた。
それ以来、私はカメラを使うのが怖くなり、撮影からしばらく離れることにした。しかし、どこかでカメラの気配が消えない。視界の隅で何かが動いたような感覚や、夜の静けさの中で誰かがこちらを見つめているような気配を感じることが増えたのだ。
あのカメラはもう手元にはないはずなのに、私の中には未だにその恐怖が残っている。写真を撮るたびに、またあの影がどこかに映り込んでいるのではないかと、カメラを覗くのが怖くて仕方ない。
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