ある週末、私は親友の彩香とショッピングモールへ行くことになった。特に何か目的があったわけではなく、ただ新しくできたカフェに行き、おしゃれな雑貨店を見て、気楽に過ごすつもりだった。いつものように、気取らない休日の楽しみを彩香とシェアするのは私にとって最高のリフレッシュ方法だった。
新しくできたカフェは評判通り、シンプルながらもおしゃれな雰囲気が漂っていて、すぐに気に入った。私たちは窓際の席に座り、甘いデザートとカフェラテを注文した。彩香は「ここ、インスタ映えするね!」と楽しそうに笑い、私たちはお互いの写真を撮り合ったり、料理の写真を撮ったりしていた。周囲には他にも客がいたが、店内は落ち着いた雰囲気で、特に変わったことは何もなかった。
写真好きの私たちは、ふざけて何枚も写真を撮りながら、のんびりとカフェで過ごした。その後、ショッピングモール内を歩きながら、アクセサリーショップや雑貨屋をのぞき、最後にゲームセンターに立ち寄った。何気なくクレーンゲームに挑戦している彩香を撮影したり、セルフィーを撮ったりして、その日はいつもと変わらない楽しい一日となった。
夜になり、私は自宅に帰ってからスマホで撮った写真を確認していた。いつも通りの楽しい写真が並び、笑顔の彩香や美味しそうなデザートが映し出されていた。しかし、ゲームセンターで撮った写真の一枚に異変を感じた。
それは、クレーンゲームをする彩香を後ろから撮影した写真だった。だが、その写真には、私たちが覚えている光景とは全く違うものが映り込んでいた。
写真の中で、彩香のすぐ後ろに、誰もいなかったはずの場所に「何か」が立っていたのだ。それは、黒い影のような存在で、はっきりとした形は見えないが、異様な雰囲気を放っていた。まるで、彩香の肩越しに彼女を見つめているように、その影は歪んだ顔のようなものをこちらに向けていた。
その顔は人間のものとは思えないほど不気味で、瞳がなく、口が異常に大きく開いている。まるで何かを囁いているかのように、その影は彩香の耳元に顔を寄せていた。私は瞬時に恐怖が込み上げ、思わずスマホを手から落としそうになった。
「こんなもの、見間違いだよね…」と自分に言い聞かせたが、その写真を再び確認すると、やはりその影はそこにあった。ゲームセンターの明るい照明の中に突如として現れた暗い存在が、私に強烈な恐怖を与えていた。
私は急いで彩香に連絡を取った。電話が繋がると、彩香はいつもの調子で「どうしたの?」と笑って答えた。私はすぐに写真を送り、「これ、見てみて」とメッセージを送った。
少しして、彩香から返事が来た。そのメッセージには、短く「何これ…怖すぎるんだけど」という一言が添えられていた。彼女も明らかにこの異常な写真に怯えている様子だった。
「誰かいただけじゃない?」と彩香は言ったが、私たちは誰かがあんな風に近くにいた記憶は一切ないし、そもそもゲームセンターには子ども連れやカップルが多く、あのような不気味な影が立っていたら、すぐに気づいていたはずだ。
「ねえ、なんか感じたりしなかった?」私は冗談半分で聞いてみたが、彩香は「いや、全然…普通にゲームしてただけだよ」と返してきた。結局、私たちはその写真について深く考えるのをやめようと決めた。お互いに怖がるだけで何も得るものはない、そう思ったのだ。
しかし、その後も、私はあの写真を消すことができずにいた。何度も削除しようとするたびに、あの影がこちらをじっと見つめているような気がして、手が止まってしまうのだ。結局、その写真は私のスマホの中に残り続け、見たくないのに時折頭の中に蘇ってくる存在となった。
彩香も同じようにあの写真が頭から離れないと言っていた。私たちは再びその写真のことを口にすることはなかったが、心の中では、あの影の正体が何だったのか知りたくないという気持ちと、何か恐ろしいものが写り込んでしまったのだという直感が交錯していた。
その日以来、私たちはゲームセンターでの写真を撮ることをやめた。何気ない場所で撮った一枚の写真が、こんなにも恐ろしいものを捉えるとは、想像もしていなかった
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