ある週末、私は友人の翔太と一緒に久しぶりのアウトドアを楽しむため、近くの公園に出かけた。秋の涼しい風が心地よく、紅葉も見ごろを迎えていたので、軽いハイキングを楽しむことにした。公園には木々が広がり、自然の中でリフレッシュできる最高のスポットだ。お互い仕事の忙しさから少し解放され、冗談を言い合いながら、自然を満喫していた。
翔太とは中学からの付き合いで、くだらない話でいつも大笑いできる仲だった。その日も、スマホでお互いの写真を撮ったり、景色を撮ったりしながら気楽に歩いていた。紅葉の美しさを背景に何枚か撮り、他愛のない会話を続けていたのだが、そこで事件が起こった。
公園内にあった古いベンチで休憩していた時のこと。私は「せっかくだし、記念に1枚撮ろうよ」と言って、翔太の背中を背景に写真を撮ることにした。翔太は冗談交じりにポーズを取り、私は笑いながらシャッターを押した。何も変わったことはなく、普通の写真のつもりだった。
その後、撮った写真を確認するためにスマホを手に取ったが、画面に映し出されたものに私は言葉を失った。写真には、翔太の背中に何かが「写り込んでいた」。背中に覆いかぶさるように、異常に歪んだ顔がぼんやりと浮かんでいたのだ。
顔は、まるで人間のものではなかった。大きく見開かれた目、裂けたように広がる口、そしてその口元はひどく不自然に歪んでいた。私の心臓は一気にドキッと跳ね上がり、手が震えた。「なんだこれ…?」と、小声でつぶやいた。
その瞬間、スマホの画面に映る不気味な顔が、ゆっくりと動いた。背中に張り付いたその顔が、微妙に首を動かしながら、まるで私の方を見つめてくるような仕草を見せた。動くはずのない静止画が、目の前で生きているかのように動いているのだ。心臓の鼓動が速くなり、冷たい汗が背筋を伝った。
そして、その顔から低く、かすれた声が聞こえてきた。
「オオオ…ぇぇぇ…オボドロ…」
人間とは思えない、かすれた不気味な囁きがスマホのスピーカーから漏れ出してきた。意味不明な音が、まるで私に直接語りかけてくるかのようだった。全身が凍りつき、恐怖で息をすることさえ忘れてしまった。画面に映る顔はさらに動き、口がゆっくりと開いて、また声がした。
「オオオ…ぇぇぇ…オボドロ…」
その瞬間、私はパニックに陥り、スマホを落としそうになった。慌てて翔太に声をかけた。
「翔太!これ見て!ヤバい、なんか変なものが写ってる!」そう叫んで、スマホを彼に向けた。
すると、私がそう声を上げた瞬間、不気味な顔の動きも、囁き声もピタリと止まった。顔は静止し、写真の中で元の位置に戻っていた。まるで、何もなかったかのように。
「どうした?」と翔太が振り向き、私のスマホを覗き込んだ。しかし、彼には普通の写真にしか見えなかったようだ。
「な、何も変なものないじゃん」と彼は笑いながら言ったが、私はまだ震えが収まらなかった。たった今、あの顔が動き、私に話しかけたような不気味な囁きを聞いたのだ。しかし、翔太にはそれが伝わらない。まるで、私にだけ見えていたようだった。
私は心臓がバクバクするのを抑えながらスマホを手に取った。写真の顔はもう動かず、ただ静かにそこに「存在していた」。まるで何事もなかったかのように。
翔太は不思議そうな顔をしていたが、「気のせいだろう」と言ってその場を流そうとした。私も「そうだな…」と無理に笑ってみせたが、内心ではあの瞬間が気になって仕方がなかった。
その後、私たちは公園を後にしたが、あの写真のことが頭から離れなかった。写真の顔が動き、恐ろしい囁き声を発したのは、確かに現実だった。しかし、それが一体何だったのか、どうして私にだけ聞こえたのかは、今でもわからないままだ。
家に帰ってからも、あの写真を何度も見返したが、顔が動いたり、声が聞こえたりすることは二度となかった。写真は、ただ不気味な顔が写っているだけのものに戻っていた。それでも、あの瞬間の恐怖は消えず、私の心に深く刻まれたままだ。
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