ある夜、私は自宅のリビングでふとした違和感を覚えた。誰もいないはずの部屋に、背後からじっと何かに見つめられているような感覚があった。振り返っても、もちろん誰もいない。それでも、その視線の感覚だけは消えなかった。
その日を境に、奇妙なことが起こり始めた。背後に誰かが立っているような気配が、日常生活のあらゆる瞬間に感じられるようになった。仕事中でも、食事をしている時でも、背中に重苦しい視線を感じる。気にしないようにしても、その視線は絶えずそこにあった。
ある日、友人の雅樹と久しぶりに会うことになり、その違和感を何気なく打ち明けた。「最近、妙なんだよ。誰かに背中を見られているような気がするんだ」と話すと、雅樹は不思議そうな顔をしたが、やがて真剣な表情になった。
「俺も、最近同じなんだ」と彼が言う。「背中に誰かがずっと立っているような感じがしてさ、気味悪くて仕方ないんだ」
まさか、と思った。私だけの気のせいではない、雅樹も同じ体験をしているなんて。しかし、その共通点が示すものはなんなのか、答えはわからないままだった。私たちは、そのままその話題を流し、また他愛のない話をしながらその日の食事を楽しんだ。
しかし、数日後に雅樹から連絡があった。「背中に、目が見えるんだ」と彼は震える声で言った。私はその言葉に息を飲んだ。
「どういうことだ?」私は動揺を隠しきれなかった。
「鏡に映る自分の背中を見た時、そこに目があったんだ。はっきりと、俺を見つめている…」雅樹の声は恐怖に満ちていた。
その話を聞いた後、私も恐怖が拭えなくなり、自分の背中を確認せずにはいられなくなった。大きな鏡を部屋に置き、後ろ向きに立つと、私は自分の背中をじっと見つめた。最初は何も異常はなかったが、ふとした瞬間、そこに「目」が見えた。まるで私の皮膚の下からじっとこちらを見つめているかのような異様な眼差しだった。
「何なんだ、これは…」私は思わず叫んだが、現実を否定することはできなかった。背中に現れた目は、まるで自分とは別の存在が私の身体を使ってこの世界を見ているような感覚を引き起こした。私はその場から逃げ出したい気持ちを抑えながら、冷や汗を流していた。
その夜、背中に何かが動いている感覚に襲われて、眠ることができなかった。まるで何かが私の中で目覚め、じっと動きを見守っているような気配が絶えず背中から感じられた。
そして、翌朝、雅樹から連絡が途絶えた。
不安に駆られた私は彼の家を訪ねた。インターホンを鳴らしても、応答はない。ドアを叩いても反応がなかったので、心配になり、玄関前の植木鉢下に隠してある合鍵のことを思い出し、ドアを開けて中に入った。部屋は静まり返っていたが、彼の寝室に入ると、彼がうつ伏せで倒れていた。
「雅樹!」私は叫びながら彼に駆け寄ったが、彼の身体は冷たくなっていた。何が起こったのか、わからない。医者を呼ぶべきだと思ったが、その時、私は背筋が凍りつく光景を目の当たりにした。
彼の背中に、無数の「目」があったのだ。小さな目が背中全体にびっしりと広がり、まるで何かを見守るかのように私をじっと見つめていた。その瞬間、私はその場に立ち尽くした。
「これは、いったい何なんだ…」私は恐怖と絶望に打ちひしがれながら、背中に何が起こっているのか理解できなかった。
そしてふと、背中がぞくりとする感覚に気づいた。
私の背中にも、何かがいる。背中からじっと私を見つめている眼差しを、はっきりと感じたのだ。
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